ビジネスを創る技術者の特徴は、環境などの変化を機敏に捉えて、自らの主導で動ける人材であることだ。従来の技術者にありがちな「おっしゃっていただければ良いものを作ります」ではダメで、黙々とインフラを支える「縁の下の力持ち」タイプでもない。むしろ、ビジネスにおいて主役となれる人である。

 楽天証券の平山忍執行役員は、そんな技術者を「イノベーティブな人材」と評する。同社は2013年1月の株式の信用取引での規制緩和を受け、他社に先駆けデイトレードの新サービスを始めたが、そんな機先を制するサービスを企画し素早くシステムを作れる技術者がイノベーティブな人材だ。

 「イノベーティブな人材とは、好奇心旺盛で『なぜ、そうなるのか』を論理的に突き詰めなければ気が済まない人のことだ。それと、他人への思いやりがあることも絶対の条件。生み出したサービスを大きくしたり横展開したりするには、周りを巻き込んでいかなければならないから、自分のことだけしか考えないようでは話にならない」と平山執行役員は言う。

 そんな好奇心と思いやりがある技術者こそが、新たなサービスのタネを見つけ、使える新技術を取り入れ、サービスの仕組みを作り、横展開して、さらに改良して次につなげる、といったサイクルを実現できるわけだ。まさにビジネスを創る人材である。

事業部門出身も必須のIT人材に

 「これからの技術者は、自分の“市場価値”を意識して、最新技術を研究し自身の技術力を高めていく必要がある。ただ、最も重要なことは商売が好きだと心から思えることだ」と指摘するのは、ローソンの佐藤達執行役員だ。

 ローソンではITベンダーなどから技術者を中途採用しているが、ユーザー企業であるローソンに長くいると、どうしても最新技術に疎くなる。だが優秀な技術者は、自分がなぜローソンに採用されたかをよく理解しており、一生懸命に勉強するという。