国内事業が売上高の大半を占める典型的なドメスティック企業だったNTTグループが、米IBMやアクセンチュアに挑戦するグローバルIT企業へと変貌を遂げつつある。NTTデータ、NTTコムといった大手IT企業を傘下に抱えていたが、2010年からはNTT持ち株会社が自ら海外IT企業の買収を手掛けるなど、グループを挙げて海外進出に乗り出している(図3)。

図3●NTTグループが2008年以降に買収した主な海外企業とその投資額
図3●NTTグループが2008年以降に買収した主な海外企業とその投資額
2013年だけで、北米と欧州のIT企業を中心に約2000億円を投じている
[画像のクリックで拡大表示]

 中でも最も情熱を傾けるのが、北米地域だ。NTT持ち株会社は2012年9月、クラウド導入による業務改革コンサルティングの米センタースタンス(現・NTTセンタースタンス)を買収すると発表した。買収額は推定で約40億円。2013年4月にはクラウドやセキュリティの先端技術を開発する「橋頭堡」として米NTTイノベーションインスティテュート(通称NTTアイキューブ)を新設し、数年で約100億円を投じる。2013年6月には米セキュリティ大手ソリューショナリーの買収を発表。投資額は推定で200億円だ。

 こうした北米シフトが結果となって現れたのが、先に紹介した2件の大型受注だ。ディメンションデータを買収した2010年10月以降、海外子会社は互いを「NTTファミリーの一員」と位置付け、コンペの際に声を掛け合い、共同受注を狙う活動を地道に続けてきた。NTTアメリカのある社員は、「NTTグループは海外ではチャレンジャーの立場。それだけに、グループ企業間で助け合う雰囲気を作りやすい」と語る。

 グループ企業が互いに顧客を紹介するなどして受注した海外での「クロスセル」案件は、2013年3月までは累計で280億円程度だった。それが、先に紹介した大型案件の効果もあり、同年4~9月だけでさらに490億円増えた。累計額は770億円超と、わずか半年で3倍近くに増えた計算だ。

 海外子会社がシナジー効果を発揮して、アプリケーション開発からインフラ運用までを手掛ける「垂直統合」型の案件は、その後も着実に増えている。2012年9月にグループ入りした米NTTセンタースタンスのグレッグ・ルークシニアVPは、「NTTグループに入ることで、より大規模な契約が取れるようになった。独SAPや米オラクル製ERPで扱うデータをSalesforce.comに流し込むデータマイニング案件を獲得したのもその一つだ」と証言する。それまでのビジネスは、業務改革コンサルティングとSalesfoce.comの導入に限られていたという。