「ジョブズとはひと味違う経営者、アマゾン創業者ジェフ・ベゾスの冷徹さと未来を見る力」を読んで非常に面白く感じました。編集者として、『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』の出版を担当した中川ヒロミさんの記事です。

 記憶に残ったのは、アマゾン・ドット・コムが、自社の電子書籍用端末のKindle向けコンテンツを増やすための交渉で取ったという、「ガゼルプロジェクト」の話です。以下に引用します。

 「ベゾスは、必要とあれば徹底的に相手をやり込める。『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』には、電子書籍をKindleに提供してもらうための出版社とのし烈な交渉が紹介されている。それは、弱ったガゼルにチーターが近づくことに例えて「ガゼルプロジェクト」とアマゾン社内で呼ばれていた計画だ。

 『まずは規模の小さな体力のない出版社から交渉を始めよ』とベゾスは指示を出したという。出版社が電子書籍の提供に難色を示せば、場合によってはその出版社の紙の本の推奨をやめる。するとその出版社は40%も売り上げが減り、30日もすると体力のない小さな出版社はアマゾンへの電子書籍の提供に応じざるをえなくなったという」。

 ビジネスの世界は非情です。多くの企業が取引先に対してはアマゾンと同様の戦略で臨んでいるのかもしれませんが、「ガゼルプロジェクト」と名付けて、部下に徹底させる意志力にすさまじさを感じました。

 果たして日本に、ここまでの意志を持った経営者がどれだけいるのでしょうか。ベゾス氏の力量へ感嘆すると同時に、少し寂しい感じがしたのも事実です。