2020年の東京オリンピック。選手を競技場まで運ぶのは「自動走行」する特別車。選手村で出てくるのは「植物工場」でアスリート向けに作った野菜や果物――。

 決して夢物語ではない。ITによる「究極の自動化」が新たな市場を作り出そうとしている。

新市場3:自動走行車
運転をITが肩代わり

 日産自動車は8月、2020年までに「自動走行車」を発売すると発表した。自動走行とは、自動車に各種センサーや、人工知能を備えたコンピュータを取り付け、人間が操作することなしに自動で走行する技術を指す。

 自動走行が注目を集めるきっかけを作ったのは、米グーグルである。ここにきて自動車メーカーも本格的に参入を宣言。独ダイムラーは2013年9月に、2020年までに自動走行車を投入すると発表した。トヨタ自動車は2013年1月に開催された展示会「CES 2013」で自動走行車のデモ映像を公開。米ゼネラルモーターズも、高速道路に限定した形だが2017年までに自動走行車を商品化するとしている。

写真1●グーグルと日産自動車の自動走行車
写真1●グーグルと日産自動車の自動走行車
グーグルはLIDARを天井部分に搭載する一方、日産はLIDARをボディーの四隅に内蔵している
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 自動車は現時点でも、画像認識技術を用いた追突防止機能のようなITを活用した安全装置を搭載している。さらに運転そのものをITが肩代わりする自動走行が可能になるインパクトは大きい。

 免許を失効した高齢者や体の不自由な人が、他人の手を借りずに自ら自動車で移動できるようになる。運転免許を持たない人々にも自動車を購入する動機が生まれ、現在約11兆円の国内新車販売市場を拡大できる可能性もある。