加速度的に処理性能の向上が続くコンピュータ。ネット上の取引業務への応用では、今や1秒間あたり何千回もの速さでの自動処理が可能だ。ネット広告のリアルタイム・ビッディング(RTB)や金融の高頻度取引(HFT)は、こうしたコンピュータの「究極の高速化」を生かした新ビジネス、新市場の典型例と言える。

新市場1:リアルタイム・ビッディング
ネット広告の裏で高速取引

 普段、目にするWebサイト。そこで表示されている広告は、実は裏で超高速のオークションを経たものかもしれない。

 Webサイトを利用者が訪れた瞬間に、その利用者に広告を見せる権利を電子的な取引市場でリアルタイムにオークション形式で売り出し、コンピュータが数ミリ秒で入札して自動取引するRTB。この技術が普及し始めているのである(図1)。

図1●数ミリ秒で広告枠を入札するRTBの流れ
図1●数ミリ秒で広告枠を入札するRTBの流れ
ネット媒体のサイトを広告主の潜在顧客が訪問した際、その訪問者に広告を表示する権利について複数の広告主がオークション形式で入札する。入札価格の決定や入札行為は、統計データなどを基にコンピュータ同士が自動的に行う
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1日に45億件のオークション

 利用者に広告を見せるかどうかは、広告主側のコンピュータが、その利用者の情報を自動分析して決める。自社サイトを訪れたことがある、自社製品の想定顧客に近い層である、といった場合は「自社製品を購入する可能性が高い」と判断し、高値で入札する。