ホンダオート三重(屋号「ホンダカーズ三重中」)は「伊勢は津でもつ、津は伊勢でもつ」とうたわれた三重県津市に本社があり、三重県の中勢地区を主要地盤に14事業所を展開するホンダ系列の自動車ディーラーである。現社長の林口朋一氏が1977年に創業し、自動車の国内販売台数が低迷する中、従業員120名を擁するまでに成長してきた(写真1、2)。

 同社は「IT経営」を他社にマネのできない「独自能力」の一つとして位置づけ、地道にデータの蓄積と活用を推進。経営理念である「顧客中心主義経営」を目指して日々努力を積み重ね、リーマンショック・東日本大震災・タイの洪水などの影響も克服し、売上総利益が会社創業以来右上がりの状況を継続させている。

 その結果、経済産業省主催「IT経営力大賞」では、2008年から6年連続で「IT経営実践企業」の認定を受けているほか、2009年には中部経済産業局主催の「中部IT経営力大賞」で優秀賞を、2012年にはCRM協議会が選定する「CRMベストプラクティス賞」を受賞した。

写真1●ホンダオート三重 社長の林口朋一氏
写真1●ホンダオート三重 社長の林口朋一氏
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写真2●ホンダオート三重の店舗
写真2●ホンダオート三重の店舗
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厳しい経営環境に対応して新車依存ビジネスから脱却

 ホンダオート三重が進めているのは、新車依存ビジネスからの脱却である。国内新車登録台数の低迷状態、消費者ニーズの多様化、市場競争の激化、利幅の縮小、メーカーの販売戦略変更による影響など、自動車ディーラーを取り巻く経営環境は厳しい。

 そのような状況で同社は「基盤収益総経費カバー率」(新車を除く各業務別の売上総利益が総経費をどの程度カバーしているかを%で表したもの)を毎月グラフ化していた。そのため、1990年ごろに、約40%あった新車販売のカバー率が急激にダウンし始めたことに気付き、「バリューチェーンビジネス」の必要性をいち早く感じ取ったという。

 自動車販売業界におけるバリューチェーンとは、新車販売とそれ以外の収益(サービス、中古車、保険など)を組み合わせた事業構造である。バリューチェーンビジネスの一環として、修理業務の中の板金・塗装業務の内製化を進めるとともに、同業務を本店に集約するため「板金・塗装集中管理システム」を導入した。これにより、同社の修理部門の売上総利益は飛躍的に向上した。同時に中古車販売や保険業務などの手数料収入充実を図った結果、新車販売動向に左右されない、安定した経営基盤ができてきた。