一般ユーザー向けの“分かりやすい宣伝”の裏側で、携帯各社は日々ネットワーク改善の努力を続けている。普段は表に出てこないこのような地道な取り組みこそ、“つながりやすさ”を実現する本当の決め手になる。

エリア設計から始まるライフサイクル

 ネットワークのエリア設計からエリア展開、品質チェック、改善に向けたライフサイクルは、おおむね図1の通りだ。(1)のエリア設計は、シミュレーターを用いて置局展開の計画を立てる行程となる。シミュレーター上の設計に基づき、現地の地権者との置局交渉、そして施工会社への工事発注を行う。

図1●エリア設計から品質チェック、品質改善に至るライフサイクル
図1●エリア設計から品質チェック、品質改善に至るライフサイクル
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 続いて(2)のエリア展開で、施工会社が実際の基地局設置工事を進める。置局交渉から設置完了までは早くて半年、通常は1年程度かかる。多くの時間が必要なことから、長期的な計画に基づいてエリア展開は計画的に進められている。

 エリア展開が終了した後も、日々の(3)品質チェックが欠かせない。携帯各社は、基地局から取得できる基地局単位のスループット、ハンドオーバーの状況などのネットワークデータを分析。加えて端末のアプリから取得できるデータを使い、ネットワークへの接続状況を調べ、品質改善につなげている。「基地局で取得できるデータは、あくまで基地局単位であり、ユーザー1人ひとりの環境までは把握できない。さらに、上り回線がつながらなかった時のデータは基地局側では把握できない」(ソフトバンクモバイルの水口徹也エリア品質管理部長)からだ。

 その他、品質が悪い地域へ赴いて、より詳しく実地調査したり、Twitterなどからユーザーの声を拾ってパフォーマンスが劣化している地域を特定したりするなど、ありとあらゆる手段を用いて品質チェックの作業を繰り返している。

 このようなネットワークの品質データは既設の基地局の配備状況とともに、地理情報システム(GIS)として地図上にマッピングされる。品質が劣化したエリアが見つかった場合、具体的にどんな対策が必要か、(4)分析作業が進められる。スループットが出ない時は容量(速度)対策が必要になり、アンテナバーが立っていない時はエリア対策が求められる。