「つながりやすさNo.1」「エリアカバー率ダントツ」「800MHz帯プラチナバンドだからつながる」「Strong」─。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルが全く同じ端末を発売するという史上初の事態となった「iPhone 5s/5c」の登場と前後して、各社のネットワークのアピール合戦は加熱するばかりだ(図1)。

 KDDIは“800MHz帯プラチナLTE”のキャッチフレーズを繰り返し、ソフトバンクモバイルは2GHz帯と1.7GHz帯を最大75Mビット/秒対応とする“倍速ダブルLTE”や、独自調査による“つながりやすさNo.1”を大々的に宣伝している。ドコモも“Strong”というフレーズで自社のネットワークを表現。4つのLTEバンドを使ったネットワークを“クアッドバンドLTE”としてアピールに躍起だ。

図1●iPhone 5s/5c発売以降、さらに過熱するLTEの「つながりやすさ」競争
図1●iPhone 5s/5c発売以降、さらに過熱するLTEの「つながりやすさ」競争
各社は目に見えないネットワークの良さを説明しようと、最大限努力しているのかもしれない。しかしシンプルに伝えようとするあまり、一部で誤解を招くケースも出てきている。
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「ユーザーが適切なサービスを選べない」

 素直にとれば、各社は目に見えないネットワーク品質を、できる限り分かりやすく伝えようと最大限努力しているのだろう。ただネットワーク品質をシンプルに伝えようとするあまり、これらの文言が独り歩きしつつある。それが少なからぬユーザーの誤解を招いているようだ。

 例えば「“プラチナバンド”だからつながりやすい」という表現は、メディアを含めて頻繁に見かけるようになった。もちろん“プラチナバンド”とされる700M~900MHz帯の周波数帯は、2GHz帯などと比べて相対的に伝搬特性が優れ、遠くまで電波が届く性質を持っている。しかしネットワークの“つながりやすさ”はプラチナバンドだけで決まるものではない。電波を届けやすくする手段は他にもあるからだ。

 NTTドコモの加藤薫社長が「ネットワークは生き物のようなもの」と語るように、ネットワークは時間や場所、状況によって刻々と変化する。そもそも各社のネットワークの優劣を厳密な条件下で比較することは極めて難しい。