システム開発に“失敗”は付きもの。コーディングミスなどの“失敗”によるバグ混入や、プロジェクトマネジメント“失敗”によるシステム開発の遅れ・頓挫などである。残念ながらシステム開発に、これらのリスクは避けられない。ではどうすべきか。他社あるいは自社の他のプロジェクトの失敗を学び、次の開発に生かすことだ。2013年の「情報システム」のランキングを見て、こんなことを感じた。
ランキング1位の記事は、「【政府システム調達、失敗の本質】55億円無駄に、特許庁の失敗」。特許庁の基幹系システム刷新プロジェクトの失敗の経緯を記した記事だ。大規模システムにありがちな、さまざま誤算や見通しの甘さが如実に表れている。
第3位にランクインした「【記者の眼】なぜ大手ICT企業で不採算案件が相次ぐのか、「対岸の火事」では済まされぬ根本的な原因」も、大手システムインテグレーターにおける失敗プロジェクトについて記した記事だ。プロジェクトが直面するさまざまな問題に対し、どうすべきかという点を筆者なりに論じている。
第6位に入った「【緊急特集!みずほ証券-東証裁判の争点を洗い出す】誤発注裁判が改めて問う「バグは重過失か」」は、バグというコーディング“失敗”を巡る両社の争いについて詳細に書き記した記事である。システムにバグは付きものとはいえ、それが原因となった重大事故に対し、「バグは重過失か否か」は非常に難しい問題である。
この記事は、みずほ証券-東証裁判の控訴審が出る前に論点を整理したものだ。結局、東京高等裁判所は「本件バグは重過失とは認められない」と判断し、それを不服としたみずほ証券は、最高裁判所に上告した(みずほ証券-東証裁判の経緯はITproまとめを参照)。
人は誰でも「失敗事例」は大きな声では言いたくないもの。できれば、ひっそりと“お蔵入り”させてしまいたい。それだけに情報が出づらく、こうした記事が出ると人気を呼ぶようだ。このような失敗事例記事をきちんとチェックし、ぜひとも自社のシステム開発に生かしていただきたい。
このほか、「失敗」とは関係ないが、ランクインした記事の中で個人的に「おや?」と思ったのは、第10位の「『クラウド化の流れは近いうちに止まる』、ガートナーがITの近未来を予想」という記事だ。この記事はクラウドを否定したものではない。近い将来、『重要なシステムは社内に置きなおすべきだと考える企業が増え』、行き過ぎたクラウドの流れが止まると予測している、というのが記事の趣旨である。
ITに関する未定予測については定評のあるガートナーの、リサーチ バイスプレジデントの言葉だけに今後クラウドがどのような流れになるのか、注目に値する。