米国で近く予定されている周波数オークションに関して、大手事業者に獲得枠を設けるべきかどうかの論争が続いている。米国市場では当局が事業者の周波数取引を許容した結果、大手事業者が成長し、競争も順調に進行してきた。それなのになぜ今、当局が介入しようとしているのか。上限枠を巡る議論を追った。

 米国では2014年に、600MHz帯の周波数オークションが予定されている。2008年の700MHz帯オークションに続く大規模な競売となる。

初のインセンティブオークション実施

 600MHz帯はこれまで、テレビ放送用として利用されていた帯域である。今回FCCは、テレビ放送事業者に周波数を放出させるために、オークション収益の一部をインセンティブとして支払うという世界初の試みを行う。このインセンティブオークションの権限は2012年の立法で初めて備わったもので、具体的な進め方についてはFCCが同年9月28日から関係者の意見を収集し審議を続けている。

 FCCは同日、各事業者への周波数割り当て方針「モバイル周波数保有(Policies Regarding Mobile Spectrum Holdings)」に関する別の審議も始めた。事業者が周波数を獲得する際に適用されるルールの見直し案を発表。これについての意見提出が続いている。

 最大の焦点は、大手事業者の周波数獲得に制約を設けるかどうかということ。この審議の行方は今後予定されるオークションのルールに大きな影響を及ぼすため、600MHz帯への入札を希望している事業者の間で激しい論争が起こっている。日本では具体的なオークションの予定がないものの、事業者への周波数割り当て一般に関わる問題として見逃せない動きといえる。

司法省がFCCへ意見書を提出

 米国のモバイル市場はベライゾン・ワイヤレスとAT&Tの上位2社が全体の7割を占め、残りの中小事業者に大差をつけている。一方、各事業者の周波数保有状況をみると、帯域によって各社のシェアが大きく異なる(表1)。もっとも、最初期にライセンスされた850MHz帯は上位2社がほぼ90%に及ぶ周波数を保有し、700MHz帯を加えるとベライゾンが45%、AT&Tが39%のシェアを握っている。

表1●事業者の周波数保有シェア(帯域別)
表1●事業者の周波数保有シェア(帯域別)
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 周波数保有に制約を加えるという考え方は、審議開始当初からFCCの中にも反発を示す委員がいた。同時並行的に審議されている600MHz帯のインセンティブオークションの収益に悪影響が及ぶことを危ぶむ委員もいた。しかし、多くの中小事業者は上位2社が周波数獲得のペースを上げていることに以前から不安を感じていた。