ユーザー企業がこれまでにない新たな試みを始める。その際に、ベンチャーの持つ発想力が大きな支えとなる。それを生かしたのがライフネット生命保険だ。

 ネット専業の生命保険会社としては、SBIアクサ生命保険(当時)が同時期に準備を進めていたものの、ほぼ“国内初”で前例がなかった。そんな中で保険の説明から見積もり、契約までを支援するWebサイトを、UI(ユーザーインタフェース)/UX(ユーザーエクスペリエンス)に強みを持つビジネス・アーキテクツ(BA)と二人三脚で構築した。「お互い、世の中に無いものを作ろうという気概を持って臨んだ」と、ライフネット生命保険の岩田慎一マーケティング部部長代行は振り返る。

 ネット専業の場合、保険商品の内容や価格を納得してもらい、申し込みにつなげるまでの全ての作業を、Webだけで完結する。「当社にとってWebは顧客との唯一の接点」(岩田部長代行)。

 この大切なWebサイト開発のパートナーとしてBAを選んだのは、「ネットだけで保険に入ってもらうには、どんな仕掛けが必要か」という観点で、保険契約までのプロセスを想定した上で必要な機能を提案していたからだ。「他社の提案はコンテンツの羅列だった」と岩田部長代行は話す。

 その一つが、ユーザーが自分のライフプランを入力すると、結婚や出産といったイベント時に必要な保障額の目安を表示する機能だ。保険に関する情報を詳しく羅列するだけでは、利用者は判断しにくい。対面販売における営業員の会話をWebサイトでどう実現するか。そのプロセスをイメージした上で実現した。

 使い勝手にもこだわりを見せた。見積もりシミュレーションはその例である(図1)。ユーザーが条件を指定すると、保険料金がスロットマシンのようにクルクルと回り、金額を表示する。

図6●ライフネット生命保険の見積もり機能
図1●ライフネット生命保険の見積もり機能
条件変更による見積もり結果の表示に動きを出し、UXを高めている
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 利用者が様々な条件を試す際に、瞬時に金額を表示すると料金の変化に気づきにくい。さらに「『保険の見積もりをしている』と体感させることが、申し込み手続きにつながる」(岩田部長代行)。

 ライフネット生命はこれらの機能をBAと議論を重ねて実現していった。会議が5、6時間に及ぶこともあったという。

■変更履歴
最後から2番目の段落の肩書きに誤りがありました。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2014/01/10 19:30]