消費者の「気持ち悪さ」なんて、制御しようがない。ビッグデータの価値を理解していない人の方が問題だ---。パーソナルデータを扱う企業の担当者から、こんな本音が聞かれることもある。こうした担当者には、プライバシー保護を巡る騒動を通じて明らかになった「3つの鉄則」を是非覚えておいてほしい。この教訓を考慮に入れるだけで、利用者の反発はかなり抑えられる。

 1つは、プライバシーへの感度は人それぞれ、という事実を認識し、プライバシーを気にする少数の利用者に配慮することだ(図C)。

 誰しも、「この情報は使ってほしくない」と考える項目が一つくらいはある。オプトアウトなどの選択肢が無いことは、それ自身が強権的な印象を与え、「何に使われるか分からない、気持ち悪い」という感情を生んでしまう。利用者に選択肢を用意することは、信頼を得る上で重要な工夫といえる。

図C●パーソナルデータ利活用、3つの鉄則
図C●パーソナルデータ利活用、3つの鉄則
個人情報保護法改正の方向性に関わらず、これらの視座は常に必要となる
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 もう1つの鉄則は、「このスキームは、米国や欧州では通用するだろうか」という視点を持つことだ。

 国内では「個人情報か否か」という法令順守の議論に焦点が当たる一方、肝心のプライバシー保護については担当者の感度が鈍くなりがちだ。パーソナルデータについて、省庁の研究会などがプライバシー保護指針を示しているが、現状では法執行力が伴っておらず、担当者が広く認識しているとは言えない。このため、少しの配慮で防げるような「炎上」が頻発した。

 一方、米企業はプライバシー保護を常に意識せざるを得ない立場にある。「米国には、配慮のない企業を糾弾するプライバシー専門家が数多くいるほか、プライバシー保護の消費者団体も民間企業や政府機関に年間数十件もの訴訟を提起している」(慶応大学 総合政策学部の新保史生教授)。米国やEUのプライバシー専門家の批判に耐えられるかを考えれば、プライバシー保護の穴を見つけやすくなる。

 最後の鉄則は、データの公共目的の利用ケースを増やし、パーソナルデータ活用の社会的意義を認めてもらうことだ。

 NTTドコモは「モバイル空間統計」の事業化に当たり、公共目的の研究にデータを提供し、データの利用価値を社会にアピールした。ヤフーも、検索履歴を選挙結果の予測に使う試みを公開している。

 特に新しいタイプのパーソナルデータを利活用する場合は、公共目的の利用を通じて、利用データの項目や匿名化の手段などを周知することで、いざ事業化の際も過敏な反応を抑えることができる。