黒電話は今も使えるの?

(イラスト・アニメーション:岸本 ムサシ)

  今回の回答者:
NTT東日本
ネットワーク事業推進本部 設備部
ブロードバンドネットワークアーキテクチャ部門 担当課長
臼井高史

 昔ながらのダイヤル式の黒い電話機(以下、黒電話)は、電話サービスによっては今でも音声通話に利用できます。NTT東日本が提供する音声通話サービスのなかで黒電話を使えるのは、「ダイヤル回線の加入電話」と「ひかり電話」です。加入電話には「プッシュ回線」もありますが、黒電話は使えません。理由は、電話番号を送信する仕組みの違いにあります。

 ダイヤル回線では、ダイヤルした番号に応じて電話機が電話線を流れる直流電流を切断します。交換機は切断された回数(ダイヤルパルス)をカウントして数字に変換、宛先の電話番号として認識します。一方のプッシュ回線では、電話機がプッシュボタンの番号ごとに決められた周波数の信号音(プッシュ信号)を電話線に送出します。交換機はプッシュ信号の違いを検出、それに応じた電話番号に変換します。しかしプッシュボタンがない黒電話はプッシュ信号が出せません。つまりプッシュ回線では使えないのです。

 黒電話を「ひかり電話」で使う場合は、宅内に設置する「ひかり電話ルーター」が従来の交換機に近い役割を果たします。電話機が送出する信号をひかり電話ルーターが検出し、電話番号に変換してひかり電話のバックボーンに向けて送ります。ひかり電話ルーターはダイヤルパルス、プッシュ信号ともに対応しています。

 なお、プッシュ回線の加入電話でも、着信だけなら黒電話が“使用可能”です。発信時に送受話器を上げると、交換機が回線の種別を確認し、種別に応じた方式の信号を受け付ける準備をします。このとき、黒電話はプッシュ信号を送出できないため、交換機は電話番号の検出ができません。これに対し着信時は、交換機が呼び出しベルの信号を電話線に送出した後、着信者が送受話器を持ち上げたことを“応答”として交換機が検出するので、回線種別による違いはありません。結果、プッシュ回線でも着信だけはできるのです。