知識社会で自立的に動く個人

 米P&Gがイノベーションを加速するため、「コネクト・アンド・デベロップ」というコンセプトで、社外の研究者や企業と共同で研究開発や商品開発に取り組んでいる。こうした取り組みの中核には、組織の壁を越え、社内外のリソースを縦横に駆使して目標を達成する人材が不可欠だ。

 経営コンサルタントとジャーナリストの著者らは、こうした人材を「アグリゲーター」と定義する。アグリゲートとは「同種、異種に関係なく集める」ことを指す。インテグレート(統合)ではなく、パートナーの個性を生かしながら協業を進めていく。情報力や技術力に加え、上位の次元でものを考え、全体を俯瞰する「メタ能力」や、自分が何をしたいかを明確にし、行動で表す「ビジョニング力」を備えている。

 こうした人材の育成には、企業が「プロジェクト主義」を取り入れることが必要だ。ルーティンワークではなく、目標と期限、完了時の期待成果、解決すべき課題が明確な環境を与える。米GEの「ワークアウト」はこうした環境を凝縮したものだとする。

 日本企業もアグリゲーターの育成に取り組んでいる。ソフトバンクの次世代経営人材育成機関「ソフトバンクアカデミア」は、300人のうち100人が社外の人材であり、アグリゲーターとして働くことを前提にしたものだという。DeNAは社員に「発言責任」を課し、階層に関係なく全社員が自分の意見をしっかり述べる文化を創っている。

アグリゲーター


アグリゲーター
柴沼 俊一/瀬川 明秀 著
日経BP社
1680円(税込)