トランジスターを発明したウィリアム・ショックレー、情報理論によって現在のコンピュータの基礎を作ったクロード・シャノン。現在の情報通信の基盤を作った錚々そうそうたる面々だが、実は両者は米AT&T傘下のベル研究所が輩出した伝説的な研究者である。本書はそんな数々のイノベーションを生み出してきたベル研究所の歩みを、上記の2人を含む代表的な6人の研究者のエピソードと共に紹介した本だ。

 トランジスターや情報理論のほか、人工衛星や光ファイバー、携帯電話など、現代では欠かせない技術が、いずれもベル研究所を源としていることに改めて驚かされる。

 またこのようなイノベーションをもたらした数々のアイデア(本書の原題はThe Idea Factoryである)がどのようにして生まれてきたのか。現在の米グーグルなど、ベンチャーを端とするイノベーションモデルと対比して論考している部分も興味深い。

世界の技術を支配するベル研究所の興亡


世界の技術を支配するベル研究所の興亡
ジョン・ガートナー 著
土方 奈美 訳
文藝春秋発行
2520円(税込)


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