2013年8月13日午後5時すぎ。神宮球場の一塁側ゲートに、中日ドラゴンズとの一戦を控えた東京ヤクルトスワローズのファンが集まってきた。行列の先にあるのは、入場チケットが発券される専用端末(図1)。ヤクルト球団が今シーズンから導入した公式チケット販売システム「スワチケ」の一部だ。メールで届くQRコードをスマートフォンの画面に表示し、端末にかざすだけで発券される。

図1●ヤクルト球団の公式チケット販売システム「スワチケ」の概要
図1●ヤクルト球団の公式チケット販売システム「スワチケ」の概要
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観客動員数が7.3%増加

 プロ野球ファンならご存じの通り、今年のヤクルトは弱い。セ・リーグ最下位が定位置だ(ITpro注:セ・リーグ最下位でペナントレースを終了)。

 ところが日本野球機構によると、前半戦終了時点のヤクルト主催試合の入場者数は、前年同期と比べ7.3%も増え、1試合平均1万8764人。セ・リーグ平均の1.6%増を大きく上回った(写真1)。

写真1●ヤクルトファンが歓声を上げる神宮球場ライトスタンドと、ヤクルト球団営業部の伊藤直也氏
写真1●ヤクルトファンが歓声を上げる神宮球場ライトスタンドと、ヤクルト球団営業部の伊藤直也氏
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 この不思議な現象は、今年から導入したスワチケ抜きに説明できない。スワチケの最大の特徴は「神宮パノラマビューイング」。観戦したいエリアから試合がどのように見えるのか、PCから確認したうえで、「通路側」など座席を選んで前売り券を購入できる。「(ヤクルト応援席である)ライト側の観客が顕著に増えたのはスワチケの効果だ」と導入を主導したヤクルト球団営業部の伊藤直也氏は目を細める。

 ぴあなどのプレイガイドでチケットを購入する場合、来場者は発券手数料を支払う必要がある。スワチケ経由ならこれが不要になる。この結果「前売り券の販売枚数も伸びた。5000人がQRコードを利用して発券した試合もあった」と伊藤氏は話す。

 球団にとっても、スワチケ経由で売ったチケットについては、プレイガイドに支払う販売手数料が不要になる。手数料は「1500円のチケットであれば、そのうち数百円を占める」(伊藤氏)ため、スワチケの好調は大きな「手取り」の増加につながっている。