上海や北京のような大都市を抱える中国をはじめ、シンガポールやマレーシアなど富裕層を多く持つ国から、カンボジアやラオスといった発展途上段階にある新興国まで、アジア(主に東南アジア)のICTマーケットといっても、同じレベルで一括りに語ることは容易ではない。だが確実なのは、スマートフォンやインターネットに代表されるICTは、たとえ途上国であっても一般的に普及を果たしつつあることだ。新興国と先進国は、ICTではもはや大きな差はないといえるのだろうか。

 アジア各国の街を歩くと、スマホを手にした一般の人を日常的に見かけることができる。ベトナムのように、ICT関連の技術力については他の新興国と比べても特に政府が力を入れている国家もある。昨今話題のミャンマーでも、ICT産業のポテンシャルは非常に高い。

 こう考えるとアジアの新興国でも、先進国のようなICT利活用が進んでいるように思える。だが、こうしたイメージでアジアのICTマーケットをとらえると、大きな落とし穴に陥ることになる(写真)。

写真●整然としているようにみえるアジアの都市でも、一歩入ればまだ雑然とした部分が残る。そうしたギャップをどう埋めるかが、新たなビジネスチャンスになるかもしれない
写真●整然としているようにみえるアジアの都市でも、一歩入ればまだ雑然とした部分が残る。そうしたギャップをどう埋めるかが、新たなビジネスチャンスになるかもしれない
写真●整然としているようにみえるアジアの都市でも、一歩入ればまだ雑然とした部分が残る。そうしたギャップをどう埋めるかが、新たなビジネスチャンスになるかもしれない
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 日本や他の先進国の場合、経済の発展にあわせて「アナログ」の技術が徐々に進歩し、何十年にも及ぶ日進月歩の結果として、現在のような「デジタル」の世界を迎えた。コンピュータやネットワークの進化は、先進国としてごく自然な流れであろう。

50~60年前に現在のICTを持ち込んで使いにくい

 ところがアジアの新興国では、そういった途中の経緯が省略されたなかで最新のICTを突然、手にすることになった。都心ならまだしも、郊外に出れば、まだ道路や電気の整備もままならない地域がアジアにはたくさんある。そんな状況でも、最新技術が詰まったスマホが持ち込まれているのだ。

 まるでタイムマシンに乗って、50~60年前の日本に現在のスマホを置きに行くようなものかもしれない。戦後すぐの日本に最先端のICTが存在しても何ができるのだろうか。