OSやアプリのバージョンアップには多かれ少なかれ、UIの変更が伴う。ユーザーのスキルにもよるが、これまで慣れ親しんできた操作方法をいったんリセットし、新たな方法論を身につける必要があるわけだ。これをコストに換算するとそれなりの金額になるし、本人のみならず、それをサポートするためのコストも発生する。
その一方で、仕事の現場には若い世代の新人も、続々と配属されるはずだ。彼らが学んできたコンピューターが、どのような環境のものだったのかを、よく知る必要もあるだろう。
以前、各種学校を取材したときに、学生にはできるだけ新しい環境を学ばせるようにしているという方針をきいたことがある。管理の都合から、古い環境を長期間使わせてしまうと、学生が社会に出たときに、その違いにとまどうことになるからだという。
学生諸君が使うパソコンは比較的新しく、それにプリインストールされたオフィスアプリも新しい。さらに最近は、スマホやタブレットの普及でタッチ操作にも慣れきっている。一方、家庭で使われているパソコンはXP環境がまだまだたくさん残っているというが、その古くささに、彼らが、パソコンを使う機会は激減し、多くのことをスマホに頼るようにもなってきている。
新しい環境を学んできたユーザーに
古い環境を理解させるのか、それとも…
その彼らに、あえて、古い環境を学習させるのは、古い環境に慣れたユーザーに新しい環境を学ばすことと同じだ。キーボードやマウスでしか操作できない環境を受け入れるために若い世代も同様に苦労をするというわけだ。
全員に同じ環境を使わせるためには、新しい環境に慣れたユーザーか、古い環境に慣れたユーザーかどちらかが犠牲になる。双方の辛苦を抑制するには、2通りの環境を用意し、サポートする側が苦労するしかない。言うのは簡単だが、やるのはたいへんだ。でも、それがITを管理するということではないだろうか。セキュリティの観点などを理由にし、つい、管理のしやすさばかりを優先しがちだが、一歩間違えば、それは管理者だけがラクをすることにつながってしまう。XPから新しいバージョンへの移行は、こうしたことを再考するいいタイミングでもある。
Windows XP終了まであと21週。
フリーランスライター