本連載の数回前に、デジタルマーケティング領域で広告主がインハウス・エージェンシーを活用する方向に進む、いわゆる「内製化」が米国で顕著になっていると述べた(関連記事:「内製化」で重要度が高まるデジタルマーケティングのスキル)。もちろん、すべての企業が内製化を推進しているわけではなく、代理店と協業する形でデジタルマーケティング施策を展開させる企業も多い。

 ただ内製化にシフトしない場合でも広告主と代理店の関係性は変わるだろうし、むしろ変わらなくてはならない部分も少なからずある。そういった、今後の広告主と代理店の関係を示唆してくれるような提言を、RSW/USとRSW/AgencySearchが公開した。提言には「Why Client/Agency Relationships Fail(なぜクライアントとエージェンシーの関係は上手くいかないのか)」というタイトルがついている。

 提言は、現在よくある広告主と代理店の間に見え隠れする問題をしっかりと捉えられているように感じられた。そこでこの提言を基に、今後の広告主と代理店の関係において重要となるポイントを考えてみる。

 RSW/USとRSW/AgencySearchは、広告主と代理店の関係が上手くいっていない状況には、いくつかの共通した要素があるという。中でも、大きなものが以下の三点だ。

  1. 不明瞭なゴール設定
  2. 理不尽な期待
  3. 少ない情報共有

 上記のように文章にして表してみると、「これでは、広告主と代理店との協業が上手くいかなくなるのも当たり前だ」と感じられるかもしれない。ただ実際の現場での様子を思い返してみると、こういった例は非常に多い。

 米国に限らず日本でも同様だが、デジタルマーケティングでそもそものゴールが設定されていないケースは決して少なくない。ゴールが設定されていないにもかかわらず(むしろ、ゴールが設定されていないケースほどこういった傾向は顕著に見られるが)、戦略や施策から導き出されるアウトプットに対して、非常に過度な期待が抱かれることもしばしばある。