2014年4月1日の消費増税を間近に控え、中堅中小企業向けの会計分野でSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)に注目が集まっている。オンプレミス型会計ソフトの多くでは、消費増税対応にバージョンアップが必要なのに対して、SaaSでは利用企業の手間や費用がかからないためだ。

 「SaaSの利用者が前年に比べて1.5倍に増えた」。こう話すのは中堅中小企業向けに会計、販売などのソフトを開発・販売するピー・シー・エー(PCA)の折登泰樹 専務取締役だ。PCAは、同社が販売するオンプレミス版と同等の機能のSaaSを2008年から提供。「利用者が伸び悩んでいたが、消費増税を機に問い合わせが増えている」と折登専務は説明する。

 新規参入も増えている()。会計ソフトやERP(統合基幹業務システム)をSaaSとして提供する各社は、消費増税対応の容易さを訴えて、オンプレミス型ソフトからのシフトを促している。

表●中堅中小企業向けにSaaSとして提供する主なERP、会計ソフト
表●中堅中小企業向けにSaaSとして提供する主なERP、会計ソフト
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 会計SaaSの専業ベンダーであるフリーは、「消費税率の引き上げが決まってから利用登録が増え始めた」(代表取締役の佐々木大輔氏)。フリーが提供する中小企業向け会計SaaS「freee」のサービス開始は2013年3月。10月17日には消費税率8%を選択できる機能の提供を始めた。「2015年10月1日に税率10%になった場合でも無償のアップデートで対応する」(佐々木氏)ことを強調し、利用者獲得を狙う。

 11月末から中小企業向け会計SaaSの提供を始めるマネーフォワードも、税率変更などに無償で対応する計画だ。

 ハマゴムエイコムは、海外製OSS(オープンソースソフトウエア)のERP「ADempiere」を利用したSaaSを9月から提供している。ADempiereの特徴は、「複数税率を適用している国での導入実績があり、税率変更に強いこと」(システム事業本部フューチャービジネスグループの尾鷲彰一グループリーダー)。同社では、日本企業向けの機能を独自に追加してサービスを提供している。

 OSSのERPである「OpenERP」をSaaSとして提供しているアクアシスも、9月から中小企業向けにPOS(販売時点情報管理)機能などを追加し、販売を強化した。

 オンプレミス型からSaaSへ。消費増税を機に、中堅中小企業向け会計ソフトやERPの市場が大きく変わりそうだ。