若手が何を考えているか。どんなことをしたいと思い、何に悩んだり不安を感じたりしているか。どのような問題意識を持っているのか。これらを知るのに、面談は絶好のチャンスである。

 ところが面談の場で若手に話をさせず、しゃべりまくってしまうマネジャーがいる。多くの場合、上司は若手よりも年齢が高く、経験も豊富だ。自覚していなくてもつい、自分が話したくなってしまうのだろう。

聴いてほしいのに聴いてくれない

 ある会社で、メンバー約100人から成る部門を率いる本部長が「部員全員と面談する」と宣言し、数カ月をかけて全員と会うことにした。特に喜んだのは、本部長と話す機会などめったにない若手のメンバーだった。日ごろ感じている疑問や自分の提案を伝えるチャンスだと張り切って準備する人もいたという。

 ところが面談が進むにつれ、若手の期待は徐々にしぼんでいった。本部長との面談を終えたメンバーの表情が一様に芳しくないのだ。「面談、どうだった?」と聞くと、「一方的に話をされるだけで、ほとんどしゃべることができなかった」「自分が話した時間は5分にも満たなかった」という答えが返ってきた。

 せっかくの機会なので上司に自分の話を聴いてほしいのに、聴いてもらえない。年長者の話を背筋伸ばして聴くだけ。本部長は「思ったことを何でも話していいよ」と言うが、こちらが何か発言するとその何倍もの長さで返ってくる。これではとても面談にならない。これから順番が巡ってくる若手たちは「なんだ、そういう場なんだ」と落胆の色を隠さなかった。