具体的な進化の方向性を紹介する前に、まずは統合管理ツールの定義について、改めて整理したい。
統合管理ツールがカバーする機能は大きく分けて図1のようになる。ベンダーごとに異なるが、少数の製品で幅広い機能を提供する場合もあれば、複数の単機能製品によって幅広い機能を提供する場合もある。
このうち基本となる機能は、サーバー機やOSといったシステムに関する情報収集や障害の早期発見を支援する「システム監視」と、ネットワークに関する情報収集や障害の早期発見を支援する「ネットワーク監視」である。システム監視機能では、CPU、メモリー、ディスクの利用状況が収集できる。監視対象の幅広さ(監視対象ハードウエアやソフトウエアの種類)と、きめ細かさ(監視する情報の豊富さ)をベンダー各社が競っており、最近は仮想化技術を利用するプライベートクラウド環境やパブリッククラウド環境への対応が盛んだ(詳しくは後述)。
さらに統合管理ツールは、これらのシステム監視/ネットワーク監視機能に加えて、複数のサーバーをまたがって実行する業務処理の自動化を支援する「ジョブ管理」も備える。ITサービスマネジメント関連業務の支援を行う「変更管理」「問題管理」「インシデント管理」などを備える製品も多い。
統合管理ツールにはどんな製品があるのか。これを示したのが表1だ。本特集で「統合管理ツール」と呼ぶ条件は大きく三つある。
第一に、システムやネットワーク、アプリケーションなど幅広い領域を管理できることだ。システム監視機能においては、監視対象がマルチベンダーである場合が多い。 第二に、前述の各種機能をまとめて提供・サポートする点だ。ここでいう統合管理ツールは、図1に示す機能を三つ以上備える製品とした。
第三に、統合管理ツールでは複数の機能が連携することだ。例えば、システム監視機能と、システム構成管理機能を連携させ、障害が発生したサーバーが、どのようなハードウエアやソフトウエアで構成されているかがすぐに分かる。