このたび出版した書籍『現場で実践! 若手を育てる47のテクニック』には、企業を超えて人を育てる例としてこんな話を掲載しました。
自分たちでなんとかしなければならない状況に置かれた2人は切磋琢磨し、成長していった。数カ月後、ユーザー企業の担当者は「あの2人、いい顔になってきたね」と言われた。
SEはユーザー企業の担当者に対して、「どうして“俺に任せろ”なんておっしゃってくださったのですか?」と尋ねた。すると、「ベンダーの力を借りなければ自分たちの仕事も進まない。だから、ベンダーの若手に成長してほしいと思ってのことだよ」という答えが返ってきた。
この話を聞いたのは、2007年ごろ。その時は「いい話だなあ」と思う一方で、「ユーザー企業のほうから『ベンダーSEを私が育てる』などと提案するのは、かなり稀有な例ではないか」と感じたものです。6年前の時点で、すでにどの職場も余裕を持てない状況に突入していました。
もっと昔、おそらく20年くらい前であれば、企業を超えて教え合う、育て合うという空気があった気がします。今でも鮮明に覚えている出来事を紹介しましょう。