富士通やITホールディングス(ITHD)傘下のTIS、クオリカがASEANでクラウドサービスを強化している()。主にASEANに進出した日系企業に向けて、タイやインドネシアなどのデータセンター(DC)を通じてサービスを提供する。顧客に近い拠点のDCを使うことでサービスの利便性や品質を高め、クラウドの利用拡大につなげるのが狙いだ。

表●ASEANでクラウドサービスを強化している国内IT企業の例
表●ASEANでクラウドサービスを強化している国内IT企業の例
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 富士通は2013年10月2日、クラウドサービス「Fujitsu Thailand Cloud Service」の提供をタイのDCを通じて始めた。9月27日に本誌がバンコクで開催したIT関連セミナー「アジアICTカンファレンス」で、同社タイ拠点の富士通システムズビジネス(タイランド)の國丸昌之社長が明らかにした。

 同サービスでは、仮想サーバーや仮想OSをIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)として提供する。メールやERP(統合基幹業務システム)などのSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)も用意した。

 従来は、各サービスをシンガポールのDCから国際回線でタイの日系企業向けに提供していた。今回、タイのDCから国内回線でサービスを提供することで、安定した通信環境を確保すると同時にコストを下げたという。

 中堅・中小を含む日系企業のASEAN進出が加速し、短期間に拠点を設立したいというニーズが高まっている。「こうした需要にクラウドで応える」と國丸社長は話す。インドネシアやフィリピンでも現地にDCを確保し、同様のサービスを展開したい考え。3年間で300社の導入を目指す。

 富士通はタイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナムというASEAN地域で2015年度に本誌推定で1000億円の売り上げを目指している。この目標達成に向けクラウド事業を拡大していく。

 一方、10月1日にタイとインドネシアに拠点を新設したTISは、インドネシアのDCを使ったIaaS「Cloud Berkembang」を8月1日に提供開始。顧客の要望に応じたスペックの仮想マシンを提供している。2015年度末までに250社への導入を目指しており、タイでも現地のDCを活用したクラウドサービスを検討中だ。10月1日には、同IaaSを利用したSaaS型eラーニングサービス「楽々てすと君@CBKB」の提供を始めた。

 クオリカは7月、生産管理システム「AToMsQube」を、ASEANの日系企業向けにタイのDCからSaaS形式で提供を始めた。従来は、日本のDCから国際回線経由で提供していた。