先週レポートしたGoogle Moonshot (月着陸) の中心組織がGoogle Xである。Google XはGoogle研究所として機能し、1960年代の宇宙開発のように、壮大な目標に向かって研究を進めている。Google X最初のプロジェクトが自動走行車 (Self-Driving Car、下の写真) であり、この研究がGoogle X設立のきっかけとなった。

自動走行技術の概要

 Googleは、2009年、スタンフォード大学のSebastian Thrun教授と共同で、自動運転技術の開発を始め、翌年、Google Xを設立し、本格的な研究に着手した。Google自動走行車は、センサーでとらえた情報を人工知能の手法で解析し、安全な走行路を判定するものである。車両上部にLidar (light detection and ranging) を搭載し、レーザーにより物体との距離を測定し、車両周辺の3Dマップを作成する。車両前部と後部にRadarを搭載し、前後の物体との距離・速度を測定し、遠方の物体の位置を把握する。フロントグラスにはビデオ・カメラが設置され、信号機、道路標識、前方の車のテールライトなどを検知する。屋根のGPSアンテナで位置を把握し、四つの車輪にはPosition Estimatorが搭載され、短距離の移動を測定し、正確な位置を算定する。

人工知能技術で走行路を判定

 各種センサーから収集した情報で、自動車の位置を正確に把握できるが、どのレーンを走っているかまでは分からない。そこでLidarのイメージをGoogleの得意とするマップに重ね、どのレーンを走行し、どこに横断歩道や交差点があるかなどを把握する。このスタティックな情報に、他車、歩行者、信号表示、道路標識などダイナミックな情報を重ね合わせ、マップ (上のグラフィックス) を完成させる。これら情報を解析し、安全な走行路を判定する技術として人工知能が使われている。

 実際の路上では様々なことが発生し、人工知能では実際の走行を通じた学習が安全走行の鍵となる。このため自動走行車は、San Francisco地区を中心に70万キロを走行し、学習を繰り返した。自動走行車は、山道での大型トラックとのすれ違い、市街地でお母さんがベビーカーを押しての道路横断、有料道路料金所の通過、San FranciscoのLombard Streetの曲がりくねった道の走行などを学習してきた。

 路上には判別できないオブジェクトがあり、自動走行車は、ホットドッグ形状の車を自動車と認識できなかった。道路工事でセンターラインが書き換えられたり、レーン減少への対応も必要となる。また、交通事故や緊急自動車など、動的な事象への対応も必要となる。雷雨、雪、竜巻など様々な気象条件での走行など、自動走行車は学習を繰り返し、人が運転するより安全なレベルに達したとしている。