中堅メーカーでシステム運用管理を担当する木村博信氏(仮名)は、開発部門が繰り返す理不尽な言動に、強い憤りを感じていた。新システムをリリースしたある日のこと。

 「リリースを最優先したので、テストの一部が終わっていません。でもたぶん大丈夫だと思います。もし何かあれば、そちら(運用側)で対応をお願いします」。

 同社の開発部門と運用部門では、こうした関係が常態化していた。つまり、開発側による不備のしわ寄せが、常に運用側に押し付けられていたのだ。当然、開発側への木村氏らの不平・不満は募る一方だった。

 木村氏は語る。「これでは運用品質を確保できない。障害が一向に減らない大きな原因になっている。いずれ取り返しのつかない大規模障害を引き起こしかねない」。

不平・不満言っても始まらない

 このように、開発部門と運用部門の間に“溝”があるケースは少なくない。「開発期間に比べて運用フェーズは長くなるばかり。開発側の不備や怠慢は、長い間、運用部門を苦しめる」と、日本IBMの沢橋松王氏(GTS SOデリバリー クラウド上席エンジニア)は指摘する。

 実は、開発部門と運用部門の間に溝が生じやすい理由がある。第一に、内部統制上、開発と運用の立場や役割を明確に分ける必要があることだ。「金融機関や製造業を中心に、開発と運用が完全に分断され、協力しにくい状況になっている」(NTTデータSMS 第一サービス事業本部 金融監査室 課長 佐合徳哉氏)。

 第二に、システムを納期通りリリースすることを最優先する開発側と、リスクを排除して安定稼働を目指す運用側の視点の違いも溝を深める理由だ。プライスウォーターハウスクーパースの堺 勝久氏(ディレクター)は「運用側の意見はユーザー視点で貴重なもの。しかし開発側がそれをすべて受け入れると、工数やコストを大きく膨らませるものが多い」と話す。その結果、開発側が運用側を意識的に遠ざけるようなケースが現場で見られるという。

 とはいえ、運用側が開発側に対して不平・不満を言っても始まらない。結局、開発側の不備による影響は運用側がかぶることになる。「これからの運用部門は、開発部門に対して積極的に貢献する姿勢を取ることが大切」と、宇部情報システムの登根 浩氏(情報処理サービス部 コンサルタント)は訴える。

 開発と運用の一体化・連携の流れは、時代の要請といえる。ここ最近アプリケーションの開発と運用を一体化する「DevOps」という考え方が広がりつつある。裏返せば、運用側の開発側への貢献がなければ、システムの品質、特に運用品質の向上は現実的に望めないのだ。