「若手の日本語力が足りない」「若手の文章力が低い。どうすればいいのか」---。こんな相談を受ける機会が増えています。若手の文章を何度読んでも意味がわからない、ポイントが不明確で冗長な文章が多い、というのです。

 新入社員研修で、新人が日報や週報を書く様子を観察していると、「何を書くか考える」というステップを省略していることがわかります。たいていの人がいきなりペンを動かし始めたり、キーボードをたたき始めたりします。頭に思いついたまま書きつづるので、どうしても冗長になったり、散文的になったりするのでしょう。

 研修の場に限らず、ふだんの職場でも似たようなことが起こっているのではないでしょうか。

「読み手」と「目的」を意識させる

 若手の日本語力・文章力を高めるには、どうすればよいでしょうか。上司や先輩はまず、「読み手」と「目的」を意識させる必要があります。

 その際はポイントを伝えるのではなく、若手に考えさせるよう「問いかけ」を使うと効果があります。例えば、こんな具合です。

先輩「これ、誰に読んでもらう文章?」
若手「プロジェクトメンバーと、お客様側のプロジェクト担当者です」
先輩「そうだよね。プロジェクトメンバーはとりあえず置いておいて、お客様のことを考えてごらん。どういう方たちなの? この文章に書いてある表現を全部理解できるのかな?」
若手「ITの専門家ではありません。全部を理解するのは難しいでしょうね…」
先輩「そうだよね。では、どうすれば理解してもらえるかな?」
若手「ITの専門家でなくても理解できる表現にして…あと、用語の解説が必要かもしれません」
先輩「そうだね。では、そういう観点で修正してみて」

 「目的」を意識させるのも大事です。

「このメールで先方に理解してもらいたいことは?」
「この議事録で関係者全員が確認しておかなければならないことは何?」

のように問いかけながら、目的を考えさせます。

 「誰を対象に、何を目指した文章なのか」を、若手は意外と考えていません。だから、自分の頭の中にわいて来る言葉を、ただつらつらと書いてしまうのです。「日記」みたいになってしまうのも理解できます。

 仕事における文章は、相手がだれか、何のための文章かを明確にすることから始めることが大切です。