第1回に述べたように、AWSとの互換性の高さには、三つのレベルがある。今回取り上げた16社のIaaSはいずれも、第一の互換レベルである「オンデマンド」「セルフサービス」「運用管理の自動化」という三つの仮想マシンの基本機能を満たす(記事末の別掲記事を参照)。

同じ運用管理を実現するために大事な機能面での互換性

 第二の互換レベルは、ストレージやネットワークといった付加機能に関する互換性だ。AWSの中でも特にユーザーのニーズの高い付加機能である大容量ストレージサービスの「Amazon S3」や、仮想ネットワークサービスである「Amazon VPC」、リレーショナルデータベース(RDB)サービスの「Amazon RDS」に相当する機能を提供しているかどうかが、重要なポイントになる。

 AWSのユーザー企業は、これらの付加機能を利用して、AWS上で運用するシステムの可用性やセキュリティを高めている。Amazon互換クラウドが、第三の互換レベルである管理用APIの互換性をどれだけ高めたとしても、機能面での互換性が高くなければ、ユーザー企業はAWSで行っているのと同じ運用管理を、互換クラウドで実現することはできない。

 そこで、まずは機能面の互換性を検証する。

OSSで機能性の互換も実現

 CloudStackやOpenStackなどを採用する完全互換路線のIaaSは、機能面での互換性が高い。これらのソフトには、AWSと互換性のある付加機能を実現するための機能も搭載されているからだ。

 一方、限定互換路線のIaaSを提供する富士通やニフティ、NECビッグローブなどは、自社でIaaS構築ソフトを作り込むことで、AWSと互換性の高い付加機能を実現している。

 機能ごとに見てみよう。

 Amazon S3は、仮想マシンのデータバックアップなどに使用できる、安価で大容量な分散ストレージサービスだ。S3と同等の分散ストレージサービスは、NTTコム、KDDI、IDCフロンティア、日本IBM、富士通、ニフティが提供している。

 Amazon RDSは、仮想マシンなどの運用に加えてRDBのバックアップなどもAWSが代行するというRDBサービスだ。同様のサービスは、NTTコム、KDDI、日本IBM、京セラコミュニケーションシステム(KCCS)、ソフトバンクテレコム、富士通、NECビッグローブが提供している。

 またAmazon RDSでは、異なるデータセンター間でRDBをクラスター構成にすることで、RDBの可用性を高めている。NTTコムが提供するRDBサービスは、AWSと同様に複数データセンター間でのクラスター構成を採っている。

 Amazon VPCは、クラウドの中にユーザー企業専用の仮想ネットワークを作るサービスだ。KDDI、IDCフロンティア、日本IBM、SCSK、インテック、KCCS、ソフトバンクテレコム、富士通、KVH、新日鉄住金ソリューションズ、ニフティ、NECビッグローブが同様の仮想ネットワーク機能を備えている。