日本に住んでいる人すべてに割り当てられる12桁の個人番号は、原則として、生まれてから死ぬまで生涯不変である(第4回参照)。では、人生のどの局面において、個人番号は使われ、あるいは使われないのか。連載第6回の今回は「ゆりかごから墓場までマイナンバー」というタイトルで、生まれてから死ぬまで、私たちの人生に個人番号がどう関わってくるのか、図1の「番号太郎」氏の例に沿って、ざっと辿ってみようと思う。

生まれてから成人するまで

図1●個人番号はこのように利用される
内閣官房「個人番号の利用例について」(2013年7月3日)から引用
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 番号太郎の出生届が提出されると、戸籍への登載手続が始まると同時に、住民基本台帳への記載が行われる。住民基本台帳への記載に際して住民票コードが割り振られ、それをもとに12桁の個人番号が決定されて、通知カードの形で番号太郎(の家族)に個人番号が通知される。すなわち誕生とほぼ同時に、番号太郎の「マイナンバーのある暮らし」が始まるわけだ。

 番号太郎の父親なり母親なり扶養者は、太郎の個人番号を扶養者の勤務先や税務署に提示する。扶養に関して、税金などの優遇を受けるためだ。扶養者の健康保険に加入させる場合も、同様に個人番号を提示することになる。また、予防接種を受ける際には、保健所などで個人番号を提示することになるだろう。

 一方、番号太郎が病院で診察を受けたとしても、病院では個人番号は使わず、健康保険証を提示するだけになる。太郎の病歴は各病院のカルテに記録されるが、個人番号とは直接リンクされない。

 番号太郎を保育所に入れる際、太郎の個人番号が必要になる。一方、幼稚園に入れる際には個人番号は使われない。小学校の就学通知書にも個人番号は使われず、小学校では出席番号や学籍番号で管理される。これは中学校でも同様だ。高校受験の際には、もちろん受験番号で管理される。すなわち、学校などでは個人番号は使われず、したがって学歴や成績と個人番号はリンクされない。唯一の例外が奨学金の申請で、これに限っては個人番号を学校に提示することになるだろう。

 番号太郎の銀行口座を開設する際にも、個人番号は使われない。生命保険に加入するかもしれないが、そこでも個人番号は使われない。パスポートを取得する際にも個人番号は使われないし、パスポート番号と個人番号はリンクされない(第4回参照)。運転免許証を取得する際にも、個人番号は使われないし、免許証番号と個人番号はリンクされない。もちろん、交通違反の記録も個人番号とはリンクされない。もしかしたら、裁判を受けることになるかもしれないが、裁判所は個人番号を使わないので、裁判記録あるいは「前科」といったものも、個人番号とはリンクされない。

 大学受験の際には、もちろん受験番号で管理されることになるが、大学においても大学入試センターにおいても、受験番号と個人番号はリンクされない。大学入学後は、学籍番号等で管理されることになるが、個人番号は使われない。

 一方、番号太郎がアルバイトをするのなら、アルバイト先に個人番号を提示する必要がある。例えば、雑誌記事を書いて原稿料をもらう際には、その出版社に個人番号を提示する必要があるし、ペンネームで書いても太郎の個人番号を提示することになる。すなわち、給料や報酬を受け取る際には、相手に個人番号を提示する必要があるということだ。したがって、就職する際には、就職先に個人番号を提示することになる。