「なぜなぜ分析」は、しっかりした理屈のもとに原因追究、および、再発防止策を導くものです。従って、その分析で使われる表現は、適切なものでなければなりません。

 しかし、表現というのは、意外と難しいもの。なぜなぜ分析でよくある間違いは、主語が明記されていないケースです。もし主語が欠けていると、次の「なぜ」を考える際の主体がぼやけてしまいます。

 そこで、機械などのトラブルの場合は「部品名」を、ヒューマンエラーによるトラブルなどでは「誰」をしっかりと明記する必要があります。

 では、そのことについて、以下の事例で、説明しましょう。

例)

 これは、工事中に管が人の足に当たってしまった事例をなぜなぜ分析したものから、引用したものです。

 事例のように、管を固定しなかった人が限定できるのであれば、その人を主語にして文を書かなければなりません。

 なぜなら、「誰」を明確にしないと、次の「なぜ」とのつながりが非常に曖昧なものになってしまうからです。(日本語の会話では主語を省略することが多いため、特にそうなりがちです)。

 すなわち、この事例の場合、作業者なのか、監督者なのか、工事士なのか、誘導員なのかを明確にしないと、どの立場の人の管理に問題があるのかが明確になりません。

 ヒューマンエラーを分析していく場合、特に工事や業務、診療といったものでの事故やトラブルというのは、事故を起こしてしまった人だけについて分析していくケースは少なく、その事故に関わってくる多くの人の要因を挙げながら分析していくのが普通です。そのような場合は、必ず主語を入れなければなりません。