神奈川県横須賀市の東光商事(藤村昌一社長)は、作業衣服・ユニフォームの卸売業者である。事務用制服や官公庁の制服、飲食店やコンビニの制服、製造業や建設業の作業服、医療用白衣など、多様なユニフォームがある。同社は、神奈川県を中心に地域の民間企業や官公庁へユニフォームを直接販売するとともに、直接販売の信用力とITを生かしてインターネット販売を開始。販売地域を全国へ拡大することで、売り上げを順調に推移させている。神奈川県内に拠点を置く中小企業を対象にした「かながわ産業Navi大賞2013」では、「直接販売ノウハウを取り込んだインターネット販売による新規顧客獲得戦略」によって奨励賞を受賞した(写真1)。

写真1●東光商事の藤村昌一社長と藤村佳代子専務(「かながわ産業Navi大賞2013」の授賞式にて)
写真1●東光商事の藤村昌一社長と藤村佳代子専務(「かながわ産業Navi大賞2013」の授賞式にて)

 同社のビジネスは時代とともに変遷している。1965年の創業時は、観光業向けに浴衣や寝具類を扱ったが、京浜工業地帯の発展に伴って製造業や建設業向けの作業服や事務服が増え、平成になってからは飲食店やスーパーマーケットといったサービス業向けのスタッフウエアを扱うようになった。さらに近年は、老人ホームやデイサービスといった介護関連業界のユニフォームまでを扱っている。

「攻め」と「守り」の両面でIT活用を推進

 こうした東光商事のビジネスを支えているのがITである。同社のIT活用は「攻め」と「守り」の二つから成る。「攻め」とは販路拡大といった売り上げ増加に向けてITを活用することで、前述したインターネット販売への取り組みが挙げられる。「守り」とは社内業務改善にITを活用することで、販売仕入総合管理システムの構築がその例だ。

 ユニフォーム業界においても事業環境は厳しい。ユニフォームを採用しない企業が増えているほか、地域の事業所数自体が減っている。さらに低価格商品を扱う大型店がユニフォームの販売に参入するなど、競争も激化した。東光商事も従来のように神奈川県を中心とする民間企業や官公庁への直接販売というやり方を続けていては、今後立ち行かなくなると考えていた。

 需要減少と競争激化に見舞われるなか、事業を維持・成長させるには、既存顧客の維持と新規顧客の獲得へ同時に取り組む必要がある。そこでITの活用が重要な役割を果たした。