2014年4月1日から消費税が8%に引き上げられることが決まり、中小企業向けの会計パッケージのベンダーが一斉に動き出した()。各社は、顧客企業のアップデートが、消費税率が変更される直前の3月末に集中する可能性が高いとみて、準備を進めている。

表●消費税率8%に向けた中小企業向け会計ソフトベンダーの主な施策
表●消費税率8%に向けた中小企業向け会計ソフトベンダーの主な施策
[画像のクリックで拡大表示]

 「弥生」シリーズを提供する弥生は、消費税率8%を計算できる最新版を10月18日に出荷した。例年、最新版の出荷は12月だが、「消費税率変更に向け、十分な準備期間を取る」(岡本浩一郎社長)ために前倒しした。

 中小企業や個人事業主を中心に110万社以上の顧客を抱える弥生では、電話での相談が増えるとみて、コールセンターを9月末までに1.9倍に増床した。「十分にアップデートをサポートできる体制だ」と岡本社長は話す。同社では、Webサイトを通じた支援サービスなども提供する。

 中小企業向け業務パッケージ「MJSLINK NX-I」などを開発・販売するミロク情報サービス(MJS)は10月17日、消費税率5%と8%を付与できる「経過措置対応版」の提供を始めた。

 「PCA」シリーズを開発・販売するピー・シー・エー(PCA)では、20万社以上の顧客のアップデート需要が集中してもサポートできるよう体制の拡充を進めている最中だ。サポート人員を倍増させたほか、北海道に開発センターを新設。「消費税対応を含めた製品の開発体制も強化している」(折登泰樹 専務取締役)。

 「奉行」シリーズを開発・販売するオービックビジネスコンサルタント(OBC)は、アップデートが必要であることの周知を急ぐ。10月上旬に特設サイトを設置し、税率8%に対応した最新版に関する情報を提供し始めた。具体的な人数は決まっていないものの、3月に向けてサポート人員を増やす計画もある。

 各社が顧客企業への働きかけに力を入れるのは、消費増税に対応するには、製品のアップデートが不可欠だからだ。製品の消費税率が固定されているため、最新版でないと税率8%を付与できない。

 ところが現時点では、「アップデートしなくても対応可能だと考えている顧客がいる状況だ」とOBCの広報担当者は話す。

 3月末に需要が集中した場合に、全ての企業が無事アップデートできるかは未知数だ。PCAの折登専務は、「17年前の増税時も混乱はあった。当時に比べると、顧客の数は大幅に増えている。全ての顧客が2014年3月末までにアップデートするのは難しいかもしれない」と懸念する。パッケージソフトを利用しているからといって油断は禁物。早めの準備が欠かせない。