日本企業にとって、オフショア開発の委託先として最適なのはどこの国か。2013年10月9日に東京で開催された「アジアITサミット」にフィリピンとインド、バングラデシュ、中国、ベトナムといったアジア5カ国の関係者が登壇し、激論を交わした(写真)。

写真●バングラディシュ・ハイテクパーク庁のホスネ・アラ長官(左)とインドIT大手テックマヒンドラのヴィジャヤ・ラガワン アシスタントバイスプレジデント(中)、中国・大連ソフトウェアパークの谷口惠高級顧問(右)

 口火を切ったのは、ソーシャルゲームなどを提供するKLabだ。同社はフィリピンにゲーム開発拠点を構え、フィリピン人の技術者を活用している。人件費の安さと英語力を評価しての決断だ。KLabの野口太郎取締役執行役員は、「英語が話せる技術者の活用は、グローバル市場への足掛かりになる」と期待を寄せた。

 これに対して「英語力なら負けない」と応じたのがバングラデシュだ。同国の技術者の多くは英語が話せる。さらにインド人と同様に数学を得意とし、それでいて技術者の人件費はインドの半分程度と言われる。ICT省の政務官を兼ねる、ハイテクパーク庁のホスネ・アラ長官はこうした点をアピールした上で、「国を挙げてIT産業を全面支援している。日本企業にも目を向けてほしい。そのために私は来日した」と訴えた。

 コストが割高だと指摘されたインドだが、IT大手テックマヒンドラのヴィジャヤ・ラガワン アシスタントバイスプレジデントは実力と実績を強調した。「インド企業は単なるコスト削減の担い手ではなく、イノベーションを推進するパートナーとなり得る」(同)。

 対日オフショアの実績では圧倒的な地位にありながら、人件費の高騰と日中関係の悪化という逆風の中にある中国はどうか。同国を代表する形で登壇した大連ソフトウェアパークの谷口惠高級顧問は、実績と日本語が話せる人材の豊富さを訴えた上で、「実は新卒技術者の人件費は変わっていない。雇用の工夫次第で、コスト上昇には対処できる」と説明。「2012年に中国各地で反日運動が起こったが、大連では目立ったデモはなかった」とし、「日本企業には都市別のリスクや実績を冷静に見極めてほしい」と述べた。

 人件費の安さと親日な点を武器に「チャイナプラスワン」の第一候補を狙うベトナムは、技術面での潜在力の高さを強調した。同国に拠点を持つIT企業、ムロドーの根本崇司最高技術責任者は、教育次第で技術者のスキルを飛躍的に伸ばせるとの見方を示した。

 委託する開発業務の内容や規模によって、オフショア委託の最適地は変わってくる。どんな目的でどこを選ぶか。日本企業にとって、腕の見せ所だ。