ソフトバンクは2013年10月19日、米携帯端末卸大手のブライトスターの子会社化を発表した。その4日前の10月15日には、オンラインゲーム大手であるフィンランドのスーパーセルの買収を発表しており(関連記事:ソフトバンクが「Clash of Clans」のSupercellを買収する狙いとリスク)、1000億円規模の海外買収案件を立て続けに発表した格好だ。

 ブライトスター買収内容の詳細については、既に多くのメディアが取り上げた通り。本稿では詳細の説明は割愛し、通信事業者が端末卸会社を買収することの意味を、世界の業界構造から考えてみたい。

 筆者は今回の買収劇を「その手があったか」と評価している。世界の市場では端末卸が果たす役割が大きくなり、通信事業者の立場が低下しつつある中で、再びその存在価値を高められる可能性を備えているからだ。

機器調達の交渉は値引きだけではない

 ソフトバンクの発表資料には「携帯端末の調達規模を拡大し、日米において競争力をさらに高めていきます」と記されている。米スプリント・ネクステルの買収時にも触れていた機器調達については、当時はネットワーク機器の調達規模拡大が前面に出ていた印象が強いが、今回の買収では端末調達が対象となっている。

 通信事業者による端末メーカーとの交渉とは、調達の条件交渉を指している。目的は大量調達による仕入単価の低減だけではなく、発注ごとの台数規模の調整や、通信事業者の望む仕様を端末メーカーに要請するなど、中身は多岐にわたる。

 NTTドコモはiPhone導入前に何度か、調達台数のコミットメントに関する言及をしていたが、これが交渉条件の典型だ。さらに国内端末メーカーのスマホにあって海外端末メーカーのスマホにはない機能、例えば「おサイフケータイ」や「防水」機能などは、通信事業者と端末メーカーの交渉が反映されたものと理解できる。韓国サムスン電子はGalaxyシリーズで、ワンセグ機能を電池に内蔵させてグローバル仕様端末を国内仕様に対応させたが、これなども交渉の成果といえるだろう。

 さらにiPhone 5s/5cでは、TD-LTEへの対応は中国市場向けの帯域のみとなった。WiMAX2+やAXGPといった国内のTD-LTE互換通信網にも対応するよう、KDDIとソフトバンクモバイルがアップルと交渉していたと推測されるが、端末の調達規模によってメーカーの対応が変わってくるであろうことは想像に難くない。