写真1●IBC2013エントランス
写真1●IBC2013エントランス
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 今年も9月12日から、アムステルダムで欧州最大の放送機器展であるIBC2013が開催された(写真1)。その概要を踏まえて、テレビが向かう方向性と日本市場を考えてみる。



4K粛々と

写真2●韓国Samsung ElectronicsのGalaxyNote3の4K撮影設定画面
写真2●韓国Samsung ElectronicsのGalaxyNote3の4K撮影設定画面
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 アナログからデジタルに移行した過程に要した時間は、今から思えばそれなりにかかった。放送技術的にも、ベースバンド系からデジタル系への移行が必要であったので人的な資質も若干異なり、現場での抵抗などもあって時間がかかった。しかし、いったんデジタル化されれば、フルHDから4K化までにかかる時間は劇的に短縮される。要するにデータ量が4倍になる(だけ)なので、デジタル処理能力が4倍になる(だけ)でいいからで、デジタルやLSIの世界では性能が4倍になるためには4年とかからない。

 たとえばIBCの前週には、ベルリンで世界最大規模の家電展示会「IFA2013」が開催されたが、ここではSamsung ElectronicsとAcerから4K動画が撮影できるスマートフォンが発表、展示された(写真2)。ついこの前、ケータイでフルHDが撮影できるようになったところなのに、もう4Kなのだ。4K撮影が可能なサムスンのGalaxy Note3は日本でも今秋発売された。

 IBC2013でのテレビを取り巻く傾向をひとことで表すとすれば、「粛々と4K」だ。撮影、ポストプロダクション、局内ワークフロー、圧縮、伝送などそれぞれのレイヤーで普通に4Kが扱えるようになりつつある。昨年までの新しいキーワードや次なる目標のようなものではなく、まさに粛々と、着実に進んでいるといえる。会場内にいるとすでに4Kだけではキャッチコピーにさえならない、当たり前といった雰囲気を感じることができる。このあたりについては、先日日本で開催された「CEATEC JAPAN 2013」とはだいぶ状況が違う。出展しているメーカーの顔ぶれはだいたい同じなのに、なぜか日本4Kが新しく、まだまだ新鮮なキーワード、セールスコピー扱いをされている。

 日本では未だに4Kが来るとか来ないとか、必要があるとかないとかいう声が聞かれるのだが、どうしてそうなるのかよくわからない。来る来ないではなく、そうなるだけであり、いまブラウン管アナログテレビが買えないのと同じで、数年で4Kテレビしか買えなくなる。必要がある、ないではなく、他に選択肢がなくなるだけだ。よく「4Kテレビでひな壇芸人を見るのか」という声が聞かれるが、答えは「イエス」だ。HD化の時にも全く同じ趣旨の指摘があったのをもう忘れてしまったのだろうか。

 メーカーの期待値からすると残念な話であるが、価格もあっという間に安価になっていくだろう。そして4K化そのものを行わないという選択肢は、進化を否定することになり、経済循環的にもあってはならない。