駅の待合室に設置された机にスマートフォンやタブレット、ノートPCを置く。それだけで自動的に充電してもらえる――。近い将来、こうした充電方法が広がるかもしれない。
すでにノートPCに自動充電できる「充電テープル」のプロトタイプが2012年9月に発表されている(写真1)。これは村田製作所、コクヨファニチャー、インテルが共同開発したものだ。
充電テーブルのある一角には透明で薄いマットが敷かれており、ここが充電可能なエリアになっている。マットには村田製作所が開発した「ワイヤレス電力伝送モジュール」が組み込まれている(写真2)。
このマットの上に、同じワイヤレス電力伝送モジュールを内蔵したノートPCを置くと自動的に充電が始まる。ワイヤレスであるから、充電テーブルとノートPCをケーブルなどでつなぐ必要はない。
充電可能なエリアに手を触れても安全である。ワイヤレス電力伝送モジュールはノートPCなどデバイスの識別情報を保持・確認できるようになっており、充電テーブルはデバイスを認識し、そのデバイスにだけ電力を伝送する。
現在は1枚のマットで1台のデバイスにしか充電できないが、今後は複数のデバイスを同時に充電できるようになる。プロトタイプを開発した3社はスマートフォンにも使える充電テーブルを公共施設などに設置していきたいとしている。
この技術を普及させるには、スマートフォンやタブレット、ノートPCといったデバイス側に、ワイヤレス電力伝送モジュールを用意してもらう必要がある。プロトタイプ作成にインテルが参加しており、ノートPC用チップセットなどにモジュールを実装するといったことが考えられる。
スマートフォンやタブレットの場合、ワイヤレス電力伝送モジュールを搭載したカバーを用意するやり方がある。
例えば日立マクセルは2011年11月、「エアボルテージ for iPad2」という製品を発売している(写真3)。iPad2に専用カバーを付け、専用スタンドに立てるだけで充電ができる。この製品は村田製作所の10W対応電力伝送モジュールを利用している。
村田製作所自身も2014年に、ノートPC向け充電キットを投入する計画だ。
村田製作所が「電界結合方式」を開発
このワイヤレス電力伝送モジュールを村田製作所が量産したのは2011年8月のことである。ワイヤレス電力伝送技術として「電界結合方式」を開発、採用した。この方式は、送電側と受電側に電極を持つ金属板を設置し、電極間に発生する電界を利用して電力を伝送する。
村田製作所が開発した電界結合方式の特徴は、10~50W程度という高い電力容量を確保したことである。発熱しにくい電極を利用した構造を採用するとともに、伝送効率の向上に工夫をこらした。これだけの電力容量があれば、スマートフォン、タブレットやノートPCなど、多くのデジタル機器にワイヤレス電力伝送技術を使って、充電できる。
電動歯ブラシの充電などに採用されてきた従来の「電磁誘導方式」は、伝送可能な容量がわずか5W程度で、消費電力が小さい一部の機器にしか利用できなかった。また、電力を空間を経由して飛ばす「磁界共鳴方式」は複数機器に送電できるものの、電力容量はやはり小さく、実用にあたって法的な制約もあった。