「今日発売になった新製品の評判は」「1時間前に報道された当社の不祥事を世間はどう見ているのか」「当社の主力ビールはどんな時に飲まれているのだろうか」――。
企業の経営者やマーケティング担当者、製品担当者たちはこうしたことを知りたがっている。それに答えるのが「ソーシャルリスニング」だ。
ソーシャルリスニングは、TwitterやFacebook、mixiといったSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に書き込まれた様々な意見をリアルタイムに解析し、企業活動に生かす取り組みである。
SNS上にある顧客の生の声を聞くことで、製品やサービスの改善、効果的なマーケティング計画の立案、“炎上”を事前に抑える対策といった手が打てる(図1、図2)。
ソーシャルリスニングを支えるのは、書き込まれた膨大な文章(テキスト)データを自動解析する技術である。
コンピュータに大量の文章を読ませ、日本語や口語の特徴を学習させ、解析精度を高める技術が発展してきたことで、あいまいな日本語や口語であっても、文意を正しく読みとれるようになってきた。
例えば「この商品ちょーやばい!」という書き込みがあった場合、この商品を褒めているのか、けなしているのかを前後の文脈から判断できるようになる。
大量の文章データを解析するには相当なマシンパワーが必要だが、クラウドコンピューティングの進展により、インターネット経由でマシンパワーを必要に応じて調達できるなど、ソーシャルリスニングを実現しやすい環境が整ってきた。
ソーシャルリスニングを支援するサービスや、ソーシャルリスニング用ソフトウエアも登場している。トランスコスモスは渋谷に「ソーシャルメディアセンター」を開設し、ソーシャルリスニングサービスを提供している(写真1)。
米セールスフォース・ドットコムはソーシャルリスニング用ソフトRadian6をクラウドコンピューティングサービスとして提供している。Radian6を使うと、企業の担当者は専門的な知識がなくてもTwitterなどの書き込みを自動的に取得、解析できる(写真2)。
こうしたサービスやソフトを利用し、専門組織を作ったり、専任の担当者を置いたりして、ソーシャルリスニングに取り組む企業が増えていくと見られている。
Twitterで消費者が「A社の商品が使いにくい」とつぶやいただけでA社の担当者から「どのような点にご不満でしょうか」と応答が来る、いわゆるアクティブサポートが当たり前に日が近づきそうだ。