写真1●2012年6月の発表会でシャープが展示した498ppiのIGZO液晶
写真1●2012年6月の発表会でシャープが展示した498ppiのIGZO液晶
[画像のクリックで拡大表示]
写真2●4.8型でフルHDのIGZO液晶を搭載した「AQUOS PHONE ZETA SH-06E」
写真2●4.8型でフルHDのIGZO液晶を搭載した「AQUOS PHONE ZETA SH-06E」
[画像のクリックで拡大表示]
写真3●14型・3200×1800ドットの液晶ディスプレイを搭載した富士通のノートパソコン「LIFEBOOK UH90/L」
写真3●14型・3200×1800ドットの液晶ディスプレイを搭載した富士通のノートパソコン「LIFEBOOK UH90/L」
[画像のクリックで拡大表示]

 電子書籍に代表されるように、文字や写真を表示した液晶ディスプレイを紙の代わりに使う取り組みが増えてきた。その際、見やすさの指標となるのが解像度である。紙の印刷物は約350dpi(ドット/インチ)の解像度があり、液晶ディスプレイで紙を代替するには紙に匹敵する解像度が求められる。

 その有力候補が、シャープが半導体エネルギー研究所の協力を得て、2012年4月に量産を開始した「IGZO液晶」である。2012年6月の発表会でシャープは解像度が498ppi(ピクセル/インチ)のIGZO液晶を展示した(写真1)。

 従来、液晶ディスプレイの解像度は200ppi前後にとどまっていた。例えば、グーグルのタブレットNexus 7(2012年モデル)の解像度は216ppiだった。アップルが第4世代のiPadで採用したRetinaディスプレイは264ppiと比較的高解像度であったが、かなりの消費電力が必要になった。

 高解像度に加え、電力の消費を抑えられる技術としてもIGZO液晶は期待されている。IGZO液晶はTFT液晶パネルの一種で、薄膜トランジスタの半導体にアモルファス酸化物を採用する。この酸化物はインジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、酸素(O)によって構成されており、これらの元素記号の頭文字をとってIGZOと命名された。

 電子を通しやすい性質を持ち、電子の移動速度が通常のアモルファスシリコンに比べて20~50倍も速いので、液晶を構成する薄膜トランジスタを小型化でき、1画素当たりの光の透過量を増やせる。この特徴により、明るさを保ったまま液晶の画素数を増やすことが可能できる。これにより高精細化を進められ、しかも通常の液晶に比べてバックライトの消費電力を抑えられる。

 低消費電力にできるもう一つの特徴は、電圧をかけなくても画面表示をしばらく維持でき、書き換え頻度を10分の1程度まで減らせること。IGZO液晶は電気回路の外に漏れ出すリーク電流がアモルファスシリコンの100分の1と小さいためである。従来の液晶はリーク電流が発生するため、画面に動きがなくても電圧をかけて常に画面を書き換えなければならなかった。

2013年から高解像度化が加速

写真4●10.1型・2560×1600ドットの液晶ディスプレイを搭載した台湾エイスーステック・コンピューターのタブレット「ASUS Pad TF701T」
写真4●10.1型・2560×1600ドットの液晶ディスプレイを搭載した台湾エイスーステック・コンピューターのタブレット「ASUS Pad TF701T」
[画像のクリックで拡大表示]

 シャープは2012年11月、NTTドコモ向けのスマートフォン「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」にIGZO液晶を初搭載した。4.9型で720×1280ドットと解像度は一般的だったものの、低消費電力を生かし、静止画再生時のバッテリー駆動時間を通常の4.8倍に延ばした。

 2013年に入って、いよいよ高解像度のIGZO液晶を搭載した製品が登場し、紙に匹敵する表示の美しさで注目を集めている。

 5月にはシャープのNTTドコモ向けスマートフォン「AQUOS PHONE ZETA SH-06E」(4.8型、1080×1920ドット)、7月には富士通のノートパソコン「LIFEBOOK UH90/L」(14型、3200×1800ドット)、10月には台湾エイスーステック・コンピューターのタブレット「ASUS Pad TF701T」(10.1型、2560×1600ドット)がそれぞれ発売された(写真2、3、4)。