写真1●米3D Systems社の3Dプリンター「Cube」。ヤマダ電機など家電量販店で購入できる(写真協力:イグアス)。
写真1●米3D Systems社の3Dプリンター「Cube」。ヤマダ電機など家電量販店で購入できる(写真協力:イグアス)
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図●3Dプリンターの仕組み。溶かした材料を積み上げていく熱溶解積層方式を示した。
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図●3Dプリンターの仕組み。溶かした材料を積み上げていく熱溶解積層方式を示した。エトキ
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写真2●3D PRINTER REPRAP MENDEL Evolution。販売価格は6万9800円。
写真2●3D PRINTER REPRAP MENDEL Evolution。販売価格は6万9800円。
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 3DプリンターはCGのモデリングツールやCADの3次元データを基に、樹脂などを使って物体を造形する装置だ(写真1)。

 造形の方式として、溶かした材料を積み上げていく「熱溶解積層方式」()、粉末の材料と接着剤を噴射する「インクジェット方式」、粉末の材料にレーザー光線を照射して焼結させていく「粉末焼結積層造形方式」、液状の材料を紫外線を使って少しずつ固めていく「光造形方式」などがある。

 これまで3Dプリンターは製造業における製品化前のデザイン確認や機能検証、建設業における建物の模型作成などに使われてきた。最近では医療分野で人工骨を作成する研究が進められており、実用段階を迎えるところまで来ている。さらにここへ来て、製品の低価格化に伴い、業務用途に限らず、フィギュア製作などホビーでも使われるようになってきた。

 価格は従来、数100万~数1000万円と高価だった。最近になって、個人でも手が届く10万~数10万円の製品が相次ぎ登場した。例えば大手家電量販店のヤマダ電機やインターネット通販サイトのAmazon.co.jpなどで、10万円台の3Dプリンターを購入できる。

 RepRap.orgプロジェクトが公開している「3D PRINTER REPRAP MENDEL Evolution」は7万円を切る(写真2)。これは利用・改変できるハードウエアを基に設計されている。

 また、Amazon.co.jpには、3Dプリンター本体に加え、材料、3Dモデル作成用のソフトウエア、関連書籍を販売する「3Dプリンタストア」という専用ページが用意されている(写真3)。

「新産業革命」への期待

写真3●3Dプリンタストア。3Dプリンター本体、材料、3Dモデル作成用のソフトウエア、関連書籍を販売する専門サイト。
写真3●3Dプリンタストア。3Dプリンター本体、材料、3Dモデル作成用のソフトウエア、関連書籍を販売する専門サイト。
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 3Dプリンターに関心が集まったきっかけは、2012年に刊行された『MAKERS―21世紀の産業革命が始まる』(クリス・アンダーソン著)が米国でベストセラーとなったことと、オバマ大統領が2013年2月、2期目就任直後の一般教書演説で、米国製造業の競争力を強化して雇用を促進するため国立研究所や大学などに3Dプリンターを設置していく、と宣言したことだ。

 『MAKERS』の著者クリス・アンダーソンは、個人がMAKERS、すなわち製造業になる新たな産業革命が起こると述べている。PCや3Dプリンターを使うことでアイデアを事業に結び付ける工程を劇的に縮められるからだ。例えば、設計情報をインターネット上で他者と共有したり、3Dプリンティングサービス事業者に送って高品質な製品を作ってもらったりできる。

製品の成熟と環境整備が必要

 日本でも3Dプリンターによって革新を生み出そうという期待が高まっている。ただし、大きな変化を起こすにはいくつかの課題がある。一つは3Dプリンターの成熟である。現行の3Dプリンターはまだ精度が低く、造形に長い時間がかかる。

 もう一つは法制度など利用ルールの整備である。米国のDefense Distributedという団体が3Dプリンターで作成できる拳銃「Liberator」の設計図を公開し、物議をかもした。プラスチックを素材とする銃だが1発の弾を撃てる。つまり、設計図と3Dプリンターがあれば、誰でも銃を作れてしまう。その後、国務省の通達によって設計図の配布は中止されたが、同様の事態は今後も起こり得る。

 3Dプリンターの製品が成熟するとともに、利用ルールが整うことによって、大量生産が前提の従来の製造業とは異なる、少数のモノを外部との協業で作る新たな市場が開かれると見られる。