これまで5回にわたって解説してきた、この「ヒューマンエラーゼロ活動でミス撲滅」連載では、主に現場作業における問題解決法を取り上げてきた。最終回の今回は、身近な職場での問題解決方法を取り上げよう。その有効な手法として「問題解決4R法」を紹介する。

 職場の問題は、まさに無限であるといっても過言ではない。「問題解決4R法」は、その職場の問題を、メンバーが本音で「話し合って、考え合って、分かり合って」解決しようという手法である。

 問題解決4R法には次のような特徴がある。(1)習熟すれば30分程度で実施できる、(2)問題解決4R法は、第4回で紹介した「KYT基礎4R法」と同じ4ラウンド構成のため、同法の経験者なら即座に実施できる、(3)だらだらと時間をかけずに短時間に限って集中的にチーム討議を行うことで充実感がある、(4)達成感もあり、“ヤル気”の行動(実践)につながることを期待できる、(5)ヒューマンエラーだけでなく、職場の様々な問題解決に手軽に活用できる---である。

職場の諸問題を本音で討議

 問題解決4R法では、まず初めに討議テーマを決定する。職場で起こったヒューマンエラーや繰り返し発生するヒヤリハットなど、実業務の中で発見した危険や問題から優先的に解決すべき問題を一つに絞り込んで討議テーマとする。また、業務に直接関わること以外でも、職場で気になっている問題や、胸につかえていることを本音で出し合い、討議テーマとしても良い。

 通常、4~6人程度のメンバーで実施し、具体的には次のように進める。

(1)第1ラウンド:現状把握

 討議テーマに関する現状や、背景となっている事実、その原因を追究し15項目以上出す。

(2)第2ラウンド:本質追究

 第1ラウンドで出した現状や事実の中から「根本的、かつ重要」と思われる項目をチームメンバーの合意で一つに絞り込む。これが討議テーマに対する「問題のポイント」となる。

(3)第3ラウンド:対策樹立

 第2ラウンドで一つに絞り込んだ問題のポイントに対して、具体的で実行可能な対策を3項目程度出す。

(4)第4ラウンド:目標設定

 第3ラウンドで出した対策の中から優先的に実施すべき対策を一つに絞り込む。これが「重点実施項目」となる。

 次に問題を解決していく行動計画を「なぜ(Why)」「誰が誰に(Who)」「いつ(When)」「どこで(Where)」「何をどうする(What)」という5Wで決める。これら5Wを基に、「○○を××して△△をしよう」といった表現で「チーム行動目標」を設定する。

 討議テーマを「ヒューマンエラーが発生している」とした例をに示す。

図●討議テーマ「ヒューマンエラーが発生している」
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 CTCテクノロジー(CTCT)で実施している危険予知(KY)研修では、「ヒューマンエラーが発生している」「同じヒヤリハットが繰り返し発生している」など、実際に職場で問題となり得る討議テーマで実施している。

 また、実際のヒューマンエラー事故が、第2回で紹介した「作業基本動作六箇条」が守られずに発生していたことから、各職場で、一箇条ごとに「なぜ守られていないか」というテーマで問題解決4R法を実施。六箇条の理解を深めることにつながった。