スポーツ関連情報サイト「Yahoo!スポーツ」のシステムは、新3種の神器を三つすべて使って開発・運用されている。導入の経緯やその効果を紹介する。

 「ユーザーにより良いサービスを提供するため、システムを継続して頻繁に作り変えていく必要がある。ITの現場は、頻繁にシステムを変更できる体制や仕組みを整えておかなければならない」─。

 これは、ヤフーの内田誠悟氏(メディアサービスカンパニー 開発本部 エンジニア)が描く、ITの現場の理想的なあり方だ。だが、内田氏が2012年7月に配属されたチームは当時、この理想とは異なる状態だったという。

システムを頻繁に変更できない現場

 内田氏らのチームにはITエンジニアが18人おり、スポーツ関連情報を提供するWebサイト「Yahoo!スポーツ」や「スポーツナビ」を担当している。

 情報提供といっても、テキストと写真だけの単純なサイトではない。例えばプロ野球の試合経過については、画面上のスコアボードが、ほぼリアルタイムに更新されていく。しかもスコアボードの得点部分をクリックすると、その回の投打の詳細情報を参照できる。この詳細情報は野球場をイメージしたデザインにしており、投手が投げ込んだ球の位置や打球の軌道などの情報を視覚的に閲覧可能だ。バッターボックスのイメージや選手の顔写真なども表示され、「ユーザーが野球を楽しむ工夫を随所に施している」(内田氏)。このサービスを実現するシステムの開発・運用を行うのが、内田氏らのチームの役割である。

 Yahoo!スポーツやスポーツナビと競合する他社サイトは数多くある。その中で存在感を高めてユーザーを増やしていくには、前述したような新しいサービスを継続的に繰り出し、サービスを改良していくことが求められる。ところが冒頭でも触れたように、内田氏が配属された当時のチームは、頻繁にシステムを変更できる体制が整っているとはいえない状況だった(図1)。

図1●新3種の神器を利用して開発した「Yahoo!スポーツ」のサイト
図1●新3種の神器を利用して開発した「Yahoo!スポーツ」のサイト
内田氏がプロジェクトマネジャーを務めるチームはRedmine、Jenkins、Chefという新3種の神器を三つとも活用し、成果を上げている

 例えば、メンバー間で情報を共有する手段が十分ではなかった。頻繁にシステムを変更するには、緻密な情報共有が不可欠である。しかし内田氏らのチームでは、メンバーごとに、主として使うコミュニケーション手段がばらばらだったという。

 あるメンバーはもっぱらメールを使い、別のメンバーは主としてメッセンジャーを使う。グループウエアを好むメンバーもいるし、できるだけ口頭で話すようにしているメンバーもいた。そのため、「情報が散在し、どこにあるのか分からなくなることがあった」(内田氏)。