Windows Azureの全体像を解説する本連載。その第1回は、クラウドコンピューティングとWindows Azureのサービス開始や進化の過程を含めて、Windows Azureで提供しているサービスの概略を紹介します。

クラウドコンピューティングの台頭が変えたシステム利用

図1●仮想化とクラウドへの進化
図1●仮想化とクラウドへの進化
[画像のクリックで拡大表示]

 離れた場所からネットワーク(特にインターネット)経由でコンピューティングリソースを利用する「クラウドコンピューティング」という利用形態は、ここ数年で急速に普及しました(図1)。

 仮想化技術とマシン性能が向上したことにより、1台のマシンに複数のOS環境を設定し、効率的に運用できるようになりました。このクラウドコンピューティング環境は、ネットワーク技術の進歩や高速なインターネットインフラが普及したことはもちろん、サーバーやネットワークなどを集約的、効率的に設置、運用するデータセンター設営技術の進化が支えています。

 クラウドコンピューティングが登場する前は、コンピューティングパワーを利用しシステムを導入する際に、サーバーマシンの調達からネットワークの構築、OSのインストール、各種管理ソフトウェアやアプリケーションサーバー、データベースなどのインストール、設定作業までを自前で行う必要がありました。それらの作業にかかる準備期間を見込んでおく必要があるだけでなく、設定後もサーバーの運用や管理のためにリソースを確保しておく必要があります。

 クラウドコンピューティングサービス(現在では単に「クラウド」と呼ばれるため以下、同様に称します)の特徴として、サービスを利用した分だけ対価を支払う「従量課金」が一般的になっています。

 今やクラウドを利用することで、コンピューティングリソースを準備する作業を省き、準備期間も大幅に短縮できるようになりました。また、その時に必要なリソースを利用したり、余剰リソースを解放してコストを削減したりするといった柔軟なリソース活用が可能になったのです。

 Webメールやスケジュール管理、ニュース、路線検索などインターネット上で「オンラインサービス」と呼ばれていたサービスは、「コンピューティングリソース(サービス)をネットワーク(インターネット)経由で利用する」というクラウドコンピューティングの定義に含まれることになりました。サービス内容は変わらないまま「クラウド」と称されていることも少なくありません。