「レント・シーカー」というのは馴染みのない表現ですが、日本語では「既得権者」「抵抗勢力」として、しばしば革新者の前に立ちはだかります。洋の東西を問わず、存在するものですが、ブランク氏は過去の事例を分析し、スタートアップ企業がレント・シーカーに対抗する術を紹介しています。(ITpro)

 スタートアップ企業が新しい市場を創造することで、以前には無かった製品やサービスが提供されて、既存の製品やサービスを根本から便利にするようになると、非常に多くの雇用が生まれます。しかし、ここでスタートアップ企業は予期しなかったかもしれない、「反イノベーション勢力」と敵対するでしょう。これらの抵抗勢力は「レント・シーカー」と呼ばれ、現状維持の旗頭です。

 賢明なスタートアップ企業は、レント・シーカーの出現を予測し、それに対処するべく創造的な戦略を準備します。最初にしなければならないのは、レント・シーカーが何者で、どのように行動するかを理解することです。

 最近、ニューヨーク州とノースカロライナ州の議員たちは、自動車販売ディーラーのロビーイストが起案した「Teslaが消費者に自動車を直接販売するのは違法」とする草案を討議しました。このニュースを聞いた私は、イノベーターたちの新しいビジネスモデルが直面するかもしれない法的な障害を改めて考えることになりました。

 現状維持を打破しようとするスタートアップ企業としては、Lyft、Square、Uber、Airbnb、SpaceX、Zillow、Bitcoin、LegalZoom、移動式屋台、チャーター・スクール(公的補助を受けない学校)、オープンオンライン教育(MOOC)などがあります。現存の産業を新しく定義するのに成功した代表的なスタートアップ企業には、Craigslist、Netflix、Amazon.com、Ebay、Paypalなどがあります。

 Tesla、Lyft、Uber、Airbnbは全く異なった産業に属していますが、これらの企業に共通している項目には以下の2つがあります。1)ビジネスモデルが破壊的で、新しい市場を創造し、現状維持を脅すこと、2)法的な困難は、直接の競合企業からもたらされるのではなく、レント・シーカーからもたらされることです。

レント・シーカー

 レント・シーカーは、既存のビジネスモデルで成功した個人あるいは組織であり、革新的な競合に対抗すべく、行政や規制組織に防御の最前線を設けようとします。彼らは 、革新的なビジネスモデルを持っている新しい競合が入ってこないよう、行政の規則や訴訟を利用します。彼らは,公衆安全や品質不足、雇用の損失など、ありとあらゆる言い回しを使って、新しい参入者をロビー活動で阻止します。レント・シーカーたちは新しい製品や市場を創成するのではなく、既存の市場のシェアを拡大するためにお金を使います。ここで重要なのは、レント・シーカーの行動は、何の価値も作り出さない、ということです。

 技術革新的な新規参入者へのこのような障壁は、経済的レントと呼ばれています。経済的レントの例は、州の自動車販売フランチャイズ法、チャーター・スクール数の制限、自動車・鋼鉄・砂糖の関税、特許トロール、行政職員への贈賄・汚職、規制組織を取り込むことなどです。それらは全て同じパターンです。経済に何の価値も生まず、イノベーションが消費者に届くのを妨害します。

規制は無いのでしょうか?

 行政の全ての規制が、レントあるいはレント・シーキングではありません。全ての経済的レントが悪いということでもありません。例えば特許は、時間制限付きで発案者が研究開発費を取り戻し、利益を得ることを可能にします。製品の出荷と同時に、全てが自由競争であれば、それは不可能です。しかし、特許を使って合法的に企業をゆするレント・シーカーとして、「特許トロール」が登場しました。