書籍「ITマネジャーのための現場で実践!若手を育てる47のテクニック」では、タイトルに「若手を育てる」という表現を使いました。ただ最近では、「若手育成」や「若手指導」よりも、「若手の成長支援」という言葉を使うようにしています。

 「若手育成」「若手指導」と言うと、主体が指導する側にあり、「(上司や先輩が)若手を教える」といったニュアンスが前面に出てきます。しかし、成長するのは若手であり、学んだり経験したりする主体も若手です。こうした若手の成長を「支援する」のが、上司や先輩のような年長者が果たす役割ではないか。「成長支援」という言い方を好むようになったのは、こう考えたからです。

OJT制度の「副作用」

 この連載や書籍でも触れましたが、多くの企業はこの10年ほどで、若手社員に対して専任のOJT担当者をアサインする仕組みを整備してきました。働く現場が「放っておいても若手が自然に育つ環境」ではなくなってきたからです。若手の育成指導に先輩が1対1で当たることで、きめ細かく若手を指導しよう、というのがOJT制度の考え方です。

 ところが、このOJT制度には副作用があります。若手が「受け身」の態度を取ってしまいがちになるのです。「OJT制度は僕たちに何をもたらしてくれるんですか?」「OJT担当の先輩は、私たちに何をしてくれるのでしょう?」などと「サービス受給者」のような感覚を持ってしまう若手も少なからずいるようです。

 OJTを制度化したのは、放っておいても若手が育たないので、先輩がある程度、密に付き合って育てていくためです。それが若手を受け身の姿勢にしてしまうのでは、本末転倒です。