前回は、企業のマーケティング活動で「デジタル」という要素が重要な位置を占める中、マーケターにも「技術的スキル」が強く求められていることを解説した。デジタルマーケティングで活用するツールが高度になっている昨今、これらを導入し、そして使いこなしていくにあたって、マーケティング的なスキルよりも「技術的スキル」が問われるようになっている。複雑な実装などが絡む場合には、社内の情報システム部門の担当者と同じプロトコルで会話ができるだけの知識が求められるはずだ。

 海外の代理店などでは、この流れを見抜き、組織として熟慮の上で対応を始めている。ここ数年間で、デベロッパーやプログラマーを数多く採用するようになってきたのは、目に見える最大の対策といっていいだろう。技術的スキルの高いリソースを確保することで、日々高まる技術的要件に確実に対応できるように、自分たちの体制を整えているのだ。

 もちろんデベロッパーやプログラマーが積極的にデジタルマーケティングの世界にかかわってくるということは、彼らに十分なマーケティングスキルが求めらることも意味する。前回「マーケティング部門の人間に技術的スキルが強く求められている」と記したが、それと同様に「情報システム部門」に属する人間にも、マーケティングに関する知識やスキルがある程度は求められるということだ。つまり情報システム部門の人間にも、時には「マーケター」としてのセンスや考え方が問われるようになっているといえる。

 こういった知識やスキルは、情報システム部門の人間が自分たちでマーケティング戦略や施策を立案し、それらをドライブしていくためのものではない。とはいえ企業がこれまでよりもハイレベルなデジタルマーケティングを実践するあたって、それを推進していくのは、マーケティング部門の人間だけではなく、情報システム部門の人間も必要ということだ。

 そもそもデジタルマーケティングは今や、単独の部門で推進させていくものではなくなっている。デジタルマーケティングを企業のビジネスで機能させるには、デジタルマーケティングを企業の持つ大きなイニシアチブの1つとして位置づけなくてはならない。

 そして社内の各部門が、それぞれの組織の壁を越える形で協力しながら推進しなくてはならない。つまり情報システム部門の人間でも、時にはマーケティング部門の人間と同じ目線でマーケティングの会話ができる程度のスキルや知識が、もはや必須になったといえる。