なぜなぜ分析は業種や業態の枠を越えて、様々な企業に受け入れられ始めている。なかでも最近、突出して高い関心を示しているのがIT(情報技術)業界の人たちである。

 毎回満席であるマネジメント・ダイナミクスの小倉仁志氏による「なぜなぜ分析 演習付きセミナー」で受講者の顔ぶれを見ても、IT業界関係者が圧倒的な多数派を占めていることが分かる(写真1)。セミナーは1日がかりのカリキュラムになっているが、午前の講義に続き、午後は実際になぜなぜ分析に挑戦するグループワークになる(写真2)。

写真1●「なぜなぜ分析 演習付きセミナー」で熱弁を振るう、講師の小倉仁志氏(写真:木村 輝)
写真1●「なぜなぜ分析 演習付きセミナー」で熱弁を振るう、講師の小倉仁志氏
(写真:木村 輝)
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写真2●なぜなぜ分析のセミナーでグループワークに取り組む受講者。多くがIT業界の人たちだ(写真:木村 輝)
写真2●なぜなぜ分析のセミナーでグループワークに取り組む受講者。多くがIT業界の人たちだ
(写真:木村 輝)
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 ヒューマンエラーに伴うシステムトラブルが無くならないIT業界からは、小倉氏に救いを求める悲痛な声が聞こえてくるようだ。実際、小倉氏にはIT業界の企業から個別の指導依頼も多数来ている(関連記事)。

 ヒューマンエラーはIT業界に限った話ではない。ただ、IT業界ではプログラムミスや、運用現場での入力ミスや操作ミスが顕在化しやすい面がある。さらにそれがシステム障害や安全トラブルなど、多大な被害につながる怖さがある。人手不足や人材の定着率の低さといった課題も大きい。

 トラブルが起きるたびに顧客企業からは原因追究と再発防止策の提出を求められる一方で、現場に戻れば、「仕事に対する意識が足りないんだ!」と上司の怒鳴り声が響く。「今度は誰がミスしたんだ?」と犯人捜しが始まり、部下への尋問と責任追及が続く。社員は追い込まれ、辞める人や心の病になる人が後を絶たないようだ(関連記事:「なぜ」が足りないのを、意識の低さのせいにするな)。