赤字38億円を跳ね返した秘策とは

 良品計画は感性を重んじるセゾングループから生まれ、他に類の無いコンセプトとデザインに優れた店舗や商品で消費者の心をつかんだ。一方で、商品開発や店舗運営が属人化する弊害が生じ、2001年の中間期決算で38億円の赤字に陥る。

 当時社長に就いた著者(現・会長)は、企業体質を抜本的に変えるため、2000ページに及ぶマニュアル「MUJIGRAM」を作るなど、徹底的な業務の標準化に取り組んだ。「売り場」という言葉の定義にまで踏み込み、新入社員でもベテラン並みの仕事ができる環境を整えてきた。本著では実際のマニュアルを公開し、改革の軌跡を詳細に書き込んでいる。

 改革を進めるうえで著者は、しまむらやキヤノン電子など他社の取り組みを積極的に学び、自社に取り込んできた。全てがうまくいったわけではないが、他社に学ぶ姿勢を貫いたのは「同質の人間同士がいくら議論しても新しい知恵は出ない」と考えたからだという。例えば、当時同社には200種類を超える商品タグがあったが、しまむらでは3種類のみと聞いて自分たちの常識を改め、50%のコストカットを実現した。

 著者は「誰もが認める超大企業より、中小企業のノウハウが参考になる」と言い、固定観念やプライドに縛られず、柔軟な発想を持ち続けた。それこそが世界で通用する企業への飛躍を支えたのだと得心させられる。

無印良品は、仕組みが9割


無印良品は、仕組みが9割
松井 忠三 著
角川書店発行
1470円(税込)