多くの日本人にとって未知な国ラオス。ICTインフラ事情についても同様によく知られていないだろう。一部の記事などで紹介されているかもしれないが、ほとんど情報がないのが現状ではないか。今回は、ラオスのICTインフラについて解説する

画面1●ラオスにある大手通信会社4社のサイト(左上から右回りにETL社、LTC社、Beeline社、Unitel社)
画面1●ラオスにある大手通信会社4社のサイト(左上から右回りにETL社、LTC社、Beeline社、Unitel社)
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 ラオスの通信環境は急速に整備されており、主に4つの通信会社(LTC社、ETL社、Unitel社、Beeline社)がそれぞれADSLや3G、LTE/4Gを、WiMAXと専用線・光ファイバーなどで提供している(画面1)。さらに、Planet Online社もWiMAXを首都ヴィエンチャンでのみでサービスを行っている。このため、ビジネス上はほとんど問題がないといえるほど、快適にインターネットを利用できる。

写真1●SIMカードは5米ドル以下で、3G用USBは30米ドルくらいで購入できる(首都ビエンチャンの店頭にて)
写真1●SIMカードは5米ドル以下で、3G用USBは30米ドルくらいで購入できる(首都ビエンチャンの店頭にて)
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 第1回目でも述べたように、価格競争の激化で年々、インターネットの料金は下がってきている。例えば、512KbpsのADSLが2008年は80米ドル/月だったが、13年には22米ドル/月と4分の1に安くなり、手ごろになった。コンビニや電話販売店でSIMカードを購入すると、すぐにインターネットにアクセスできる環境が整うわけだ(写真1)。

 ラオスには中国のような政府の規制はなく、FacebookやTwitter、YouTube、そしてニコニコ動画にアメーバブログ、Yahooブログなど、日本発のコンテンツにも自由にアクセスできる。「LICA-JICA Lao IT Service Market 2012 Report」によると、ラオスのインターネット普及率は約11%だった(表1)で、これは日本の1998年頃と同じくらいだろう。日本では98年から4年ほどで普及率が80%を超え、ネットバブル期の高揚感とともにインターネットが普段の生活やビジネスに浸透していった。まさに同様のうねりがラオスにも巻き起ころうとしている段階なのだ。

表1●インターネット料金およびユーザー数の推移
(「LICA-JICA Lao IT Service Market 2012 Report」による)
2008
2009
2010
2011
2012
インターネット使用料金(512Kbps) 80米ドル 65米ドル 55米ドル 25米ドル 22米ドル
インターネットユーザー数(全体) 37万 43万5000 50万 56万 67万5000
同伸び率 - 18% 15% 12% 21%
固定インターネットユーザー数 2万1500 2万8000 3万6000 4万7000 5万5000
同伸び率 - 30% 29% 31% 17%

バックボーンが整い、より快適な環境が実現へ

 ラオスでは、大手電話会社のインターネット・サービス・プロバイダ(ISP)部門が海外のISPと接続していたため、中小規模のISPは以前は存在しなかった。しかし11年にラオス政府が「Lao National Information Center(LANIC)」を設け、国内ISP間の接続と国際回線を一括管理する方針を打ち出した。

 この方針により複数のISP用の国際回線をまとめ買いしたボリュームディスカウントで大幅な値引きが可能になったため、ISP事業者の多様化と利用料の低下につながっている。そして12年にLANICがTier1の接続を実現したことでインターネットのバックボーンが整った。今後はより快適で安価なインターネット接続環境が実現される見込みである。