国際協力機構(JICA)とラオスICT商工協会(Lao ICT Commerce Association: LICA)は共同で、2009年からICTサービス市場調査リポート「Lao IT Service Market Report」を毎年、取りまとめている。これを参照しながら、ラオスのICT産業の今後とラオスのICT産業への日本企業の参入の可能性について考えてみよう。

 ラオスにおけるICT産業は、日本と比べてまだ初期のステージといえる。ICT企業といっても、ハードと海外製のパッケージソフトの輸入販売を行っているところが大半だ。一部企業が、国内向け会計ソフトを開発・販売しているにすぎない。

 システムインテグレーター的な企業がほとんどないため、一般的なシステム開発となると、個人プログラマや小規模のソフトハウスが、それぞれの専門分野を担当するチームで行っているケースが多い。ただし開発ニーズが出てくるにつれて、これらの小規模事業者は確実に増えている。

 最近では基幹産業や金融機関への大規模なICT導入が始まり、ICT技術者の需要は高まりつつある。大型案件の場合は海外のICT企業業者に任せることが多いが、小規模なWebサイト構築(会社紹介や商品広告など)、POSシステムなどはラオス国内で対応できる。

 一方、海外オフショア開発の受託については、一部は日本から小規模開発を受けた事例もあるが、まだまだこれからといったところだ。

サービスはハード販売の「おまけ」の扱い

 「Lao IT Service Market 2012 Report」によれば、ICTサービスの市場規模は2012年が約1億2000万米ドルとなっている(図1)。ただし、このうち約半分はハードの販売とされるので、純粋なICTサービス市場の規模は6000万米ドル程度だろう。

図1●ICTサービス企業の売り上げから予測するラオスのICTサービス市場規模(ハードの売り上げも含む)。単位は100万米ドルで、2013年と14年は予測値
図1●ICTサービス企業の売り上げから予測するラオスのICTサービス市場規模(ハードの売り上げも含む)。単位は100万米ドルで、2013年と14年は予測値
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 実はラオスでは、ハードとICTサービスの売り上げを今のところ明確に分けていない。これは商習慣によるところが大きく、ラオスのユーザー企業の認識では、ソフト導入や機器設置、OSやネットワークなどの設定、運用後の障害対策は、いまだ「無料」か「非常に安価」と考えているからだ。

 ICTベンダーの多くは、ハード販売のいわば「おまけ」としてICTサービスを提供しているのである。ICTサービスにかかるコストは、ハード価格に上乗せしていると思われる。このような商習慣が、ハードとICTサービスの売り上げの区別を難しくしている。

 しかし最近は、ラオスのICTサービス企業の主な業務内容として、Webサイト開発やセキュリティを手がけるケースが増えている。ICTサービスがハード販売の付帯商品から、独立した収益事業に移行していく時期に来ている模様である。