最近、パッケージベンダーや小規模なソフトハウスが、ユーザー企業からシステムの運用を請け負うケースが増えている()。クラウドや、Chefのような新しいタイプの運用管理ツールの活用で、人手に頼らずシステムを運用できるようになったからだ。大きな投資を行わずにシステム運用代行ビジネスができるようになったことから、新規参入が増えた。

表●クラウドを活用して運用代行サービスを提供しているパッケージベンダーやソフトハウス
表●クラウドを活用して運用代行サービスを提供しているパッケージベンダーやソフトハウス
いずれも「Amazon Web Services」を活用している
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 例えばワークスアプリケーションズは2012年9月から、同社のERP(統合基幹業務システム)パッケージ「COMPANY」の運用を請け負うサービス「COMPANY on Cloud Managed Service」を開始した。ITインフラには「Amazon Web Services(AWS)」を使用し、アプリケーションの運用は自社製の運用管理ツール「Wc3」で自動化した。AWSの管理用APIを呼び出すことで、仮想マシンなどの操作を自動化している。

 同社はこれまでも、人手によるCOMPANYの運用代行サービスを実施していた。ITインフラにAWSを活用する新サービスは、人的コストがかからないため、料金を従来よりも4割引き下げた。

 「これまでのアウトソーシングには人手が必要だったので、我々のような規模の小さいパッケージベンダーが、規模の大きなシステムインテグレーターに対抗するのは難しかった」(ワークスアプリケーションズの松本耕喜氏)。クラウドを活用することで人件費を抑え、大手ベンダーに対抗できる安価な運用代行サービスを提供できるようになったわけだ。

 ノーチラス・テクノロジーズも2013年3月に、流通BMSパッケージ「UJX」の運用代行サービスを開始した。ITインフラにはAWSを使う。既にアンデルセングループが、UJXの運用代行サービスを利用している。ノーチラスはHadoopで基幹業務バッチを実行するためのフレームワーク「Asakusa Framework」の運用代行サービスも開始している。

小規模ソフトハウスも参入

 ソニックガーデンは、受託開発したアプリケーションに関して、運用だけでなく稼働後のアプリケーション保守も提供するというサービスを提供している。ユーザーは毎月、定額のシステム利用料金を支払う。その中に開発、運用、保守の費用が含まれている。

 ソニックガーデンは社員数が7人だが、三菱東京UFJ銀行グループの社内SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を受託した実績もある。運用を担当するのは、アプリケーション開発者でもある安達輝雄氏ひとりだけ。ITインフラにはAWSを、OS/ミドルウエア運用にはChefを活用することで、人手を抑えている。

 日本では、ユーザー企業の社内に開発部門が無く、社外に開発委託するケースが多い。システムを開発するベンダーが、クラウドを活用しながら運用を代行するこれらの取り組みは、開発が運用も兼ねる「日本型DevOps」と言えそうだ。